男子400メートル予選で、日本人の母を持つマイケル・ノーマン(23=米国)が6組を走り、45秒35の2着で危なげなく2日の準決勝へ進んだ。200メートルを過ぎたあたりでスピードを落とし、後半は流して終えた。

頭に巻いているバンドがトレードマークのノーマン。東京五輪は初めての五輪というだけでなく、特別な思い入れを持っている。

「もちろんアメリカを代表していることになるんだけど、それと同時に日本にいるファミリーの思いも背負って走るんだ」

出身は米カリフォルニア州サンディエゴで、伸び盛りの23歳。400メートルの自己ベストは43秒45。43秒03の世界記録(ウェイド・バンニーキルク=南アフリカ、2016年)突破も狙う金メダル候補である。加えて他の種目もすごい。200メートルも19秒70(日本記録は20秒03)、100メートルも9秒86(同9秒95)の自己ベストを持っている。

母は静岡・浜松市出身の伸江さん。入野中時に100メートルで、日本中学生女子初の11秒台をマークし、11秒96の元中学女子の日本記録保持者だ。西遠女子学園高を卒業後に米国に留学し、その後に移住の道を選んだ。そこで結婚した米国人の短距離の選手との間に生まれたのがノーマンだ。母が日本の歴史に名を残したスプリンターだったことは「16か17歳の時に他の人から聞いたんだ。(母は)謙虚で自慢をしないから」という。そして「14歳のころは野菜を食べていなかった。でも、お母さんが体の基礎作りとして『それはまずい』と生活習慣を正してくれた。それが今に生きているんだ」と感謝している。

自分が生まれた国のユニホームを着て、母の祖国を走るノーマン。2つの国の思いを背負って、頂を見据えている。