東京オリンピック(五輪)のテニス男子シングルス3回戦に登場したダニエル・メドベージェフ(ROC)が「死んだら誰が責任をとるんだ」と審判に暑さを訴えるなど、史上最も暑い五輪に選手のみならず海外メディアからも批判が噴出しているが、陸上短距離選手には有利に働く可能性があると米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

1984年ロサンゼルス大会から4大会連続となる9つの金メダルを獲得している陸上界の元スター選手カール・ルイス氏(60)が「短距離走選手は99%、この気候を好む。特に米国人は」と同紙に語った。

現在はヒューストン大学で陸上競技のアシスタントコーチを務めるルイス氏は、東京の暑さを「風のないカリブ海」と表現し、米国のほか強豪ぞろいのジャマイカの選手たちも暑さが追い風になる可能性を指摘。科学的に暑さによる急速な筋収縮や空気抵抗をわずかに減少させることなどが要因で、短距離走や走り幅跳びで驚異的な好成績が出る可能性があると語っている。

同紙は過去半世紀にわたって東京やその他の都市で行われた大会で、荒天の直前または直後に驚異的な成績が出ている現象を伝え、200メートルの有力メダル候補ノア・ライルズ(米国)の「レース直前に雨が降ると速く走れる」とのコメントを紹介している。男子400メートルハードルに出場しているライ・ベンジャミン(米国)は、「寒い時は筋肉が硬く、負傷しないようにより慎重になる」と語っており、陸上短距離走に限っては暑さによって記録更新ラッシュが起こるかもしれない。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)