初出場の本多灯(ともる、19=アリーナつきみ野SC)が、日本の伝統を死守した。200メートルバタフライ決勝で8レーンからレースを展開。150メートルを4番手で折り返し、得意のラストスパートで自己ベスト1分53秒73を出して、銀メダルを獲得した。04年アネテ大会から続く日本男子のこの種目の連続メダルを「5」に伸ばした。苦戦が続く競泳男子で今大会1号メダル。五輪1年延期で飛び出した19歳が、重いムードを吹き飛ばした。

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19歳がやった。準決勝最下位の8位通過から銀メダル。本多は「悪い流れをかき消してきました!」。右手を高く突き上げて左手で水面をたたく。「必死に泳いで何番かわからなくて…。『2位だー』『1分53秒台だー』とうれしすぎて、はっちゃけた。(男子の重い)雰囲気はわかるけど、自分のやりたい通りにやってます!」。「周りを明るく照らす存在になってほしい」という願いから「灯(ともる)」。その名の通り、喜びを全身で表した。

決勝までは硬かった。大会前の自己ベスト1分54秒23はメダルを争うレベルだが、予選は同組になった世界記録保持者ミラク(ハンガリー)に緊張。準決勝は勝ち抜きを意識しすぎ、自分にプレッシャーをかけた。「決勝はもう、楽しむしかねーな」。開き直って得意のラストスパートを爆発させた。

飛躍のきっかけは突然だった。昨秋、五輪2大会連続2冠の北島康介氏からいきなり電話がかかってきた。競泳国際リーグ(ISL)「東京フロッグキングス」への誘いだった。19年世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得していたが、フル代表の経験はなし。「北島さんから電話をもらった時点で驚いた」。瀬戸がメンバーだったが、女性問題による年内活動停止で、代役として白羽の矢が立った。

レースのあるブダペスト出発の5日前だったが、参加を決断。入江、萩野、大橋、さらにドレセル(米国)ら海外トップと過ごした5週間。「日本のトップレベルと自分の差、世界と自分の差。それを知ることができた」と財産にした。

日本勢はこの種目で5大会連続のメダル獲得。「途切れさせちゃいけない」としっかり責任を果たした。「(日本は)『次こそ金』とずっといっている。パリ(五輪)を目指すので、そこでいい勝負をしたい」。金メダルのミラクは破格の世界記録1分50秒73を持つ。「今は勝負にならない。次に五輪で戦う時は、彼が楽しんでくれるようなレースをしたい」と宣言した。【益田一弘】

◆本多灯(ほんだ・ともる)2001年(平13)12月31日生まれ、神奈川県出身。神奈川・日大藤沢高出、日大2年。アリーナつきみ野SC。男子200メートルバタフライで19年世界ジュニア選手権2位。「周りを明るく照らす存在になってほしい」という願いから「灯(ともる)」と名付けられた。172センチ、75キロ。