今回はクリスティアノ・ロナウド選手(33)に出された130億、150億円という金額が現金一括払いであるということで、この裏側に迫ってみようと思うのですが、その前に多くの皆様からのご質問にお答えしたいと思います。

まず、C・ロナウド選手は売りに出されていたかどうかという質問が多く届いたのですが、恐らく売りに出されていたというよりは、チームに所属したいかどうかを問われたというのが本当であると思われます。

スペイン人の特有の言い回し・表現方法で、「あなたはどうしたいのだ?」とよく聞かれます。恐らくこの会話があったのだと思います。そして代理人であるメンデス氏は残るのであれば残るなりの条件を提示して交渉が行われたであろうと考えられます。


<選手側の狙い>

・可能な限り長期にわたる契約

・可能な限り高額な契約金


<チーム側の狙い>

・できるだけ短期間にわたる契約

・できるだけ低い給与による契約


このように比較して見ると、選手側とチーム側では完全に真逆のベクトルが向いていることがわかります。一概に言い切れない部分もありますが、基本的にはこのような構図になります。

ではなぜユベントスはそのチームが本来取らなければならない方向性を取らず、選手の要求をのんだのでしょうか? 非常に難しい部分ではありますが、このフットボールビジネスをあることに例えることによって分かりやすくご説明できるかと思います。

レアル・マドリードMBAでは、レアル・マドリードをディズニーランドに例えることでこのエンターテインメント・ビジネスを分析しました。

ディズニーランドでは毎日のようにパレードが行われ、そして1日に3、4回とそれは行われます。それを見るためにチケットを購入し、時には並んでアトラクションを楽しみながら園内では飲食を楽しみます。

どうでしょう、これは全くもってサンティアゴ・ベルナベウで行われている行動と重なるのです。ベルナベウ・スタジアムをディズニーランドだとしたら、まさにC・ロナウド選手はミッキーマウス、メインキャラクターです。横に多くのスター選手が並び、それはまさにミッキーマウスと一緒に並んでいるディズニーキャラクターそのものです。

しかし、大きく違うところがあります。レアル・マドリードのミッキーは1週間に1、2度だけ、それも1回あたり90分間位しか登場しません。さらに、こちらのミッキーは年齢を重ね、そしてけがをする恐れも大いにあります。一度けがをしてしまうと、1カ月近く出てこないことも十分に考えられます。

関連グッズは飛ぶように売れ、そして世界中に多くのファンを持ちますが、同時に格段にリスクが高いミッキーでもあると言えるのです。これを運営していかなければなりません。

実際のところ、C・ロナウド選手は33歳としては考えられない肉体の持ち主ではありますが、19歳のスター候補選手と比べるとフットボール界では当然高リスクという事になります。さらに2、3年後を考えるとどのような状態であるかは全く想像がつきません。このような選手に長期間の高額な契約を提示することは基本的には難しくなりますよね。

1選手に年俸30億円を出すのであれば、年俸10億円前後で3選手ほど、どうしてもレアル・マドリードでプレーしたいという気持ちを持った選手を探してくる方がよっぽどチームのためになる、といった考え方であったことは想像に難くありません。ユベントスはまさにこのミッキーマウスを高リスクでも取りたかった、ということになります。

さて次回はこの高リスクを取った背景と移籍金が現金一括払いで支払われる理由に迫ってみたいと思います。【酒井浩之】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)