過去に何度かお伝えしたファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)の話です。欧州カップ戦(チャンピオンズ・リーグ=CL、ヨーロッパリーグ=EL)に参加するクラブに赤字経営・支出超過を禁ずることで、クラブ経営の健全化・安定化を義務づけ、さらに財政破綻を未然に予防するための仕組みとして2010年前後から導入されてきたルールです。近年は各リーグでも採用されており、スペインではサラリーキャップ制も独自に導入されています。
背景はヨーロッパのプロサッカー界全体に蔓延していた(現在でもしている部分もありますが)、慢性的な赤字体質です。目先の勝利を追い求めて、短期的にクラブの収入を上回る資金を移籍金や年俸といったチームの戦力強化に注ぎました。しかし思うような結果が得られず、その注ぎ込んだ分が赤字となってしまい、結果的に借金を積み重ねて破産に至るという悪循環。どのクラブでも頻繁に起こりうる事象で、現実的に起こっていました。今から約20年前にはなりますが、2000年代初頭のイタリア・フィオレンティーナ、ナポリ、07年前後のリーマンショック直後のイングランド・ポーツマス、ウェストハム、10年のスペイン・マジョルカ、12年のスコットランド・レンジャーズなどは実際に経営破綻を起こしました。共通していたのは難しいことでありません。当初はオーナーが私財を投じて赤字を穴埋めしていたものの、その資金が尽きたところで一気に手の打ちようがなく、最終的にはクラブの破産へたどり着きました。UEFAの場合、FFPにおいて「収入を上回る支出」を禁じているだけでなく、「オーナーによる赤字の穴埋めそのものを認めていない」のはこういった背景があるからです。
昨シーズン奇跡的に残留を果たしたイングランド・プレミアリーグに所属するエバートンFCは、リーグが過去3年間の損失額として1億500万ポンド(約190億9000万円)しか認めていない中、実際は3億7200万ポンド(約676億1000万円)を計上したと現地で報道されました。現在は第三者委員会によって調査が進められているようですが、この財務規則違反が確定すれば、チーム活動は大きく制限されます(おそらくではあるが赤字が解消されるまで選手の獲得禁止などが課せられるかも)。
昨シーズン何とか残留に漕ぎつけたエバートンですが、今季も苦しいスタートです。ここまで9試合を終えて、勝ち点7の16位。以前にもレポートしましたが、今年3月にも一度FFP違反の疑いが浮上しておりました。資金繰りに厳しい状況ですが、今年9月に現オーナーのファルハド・モシリ氏はクラブを投資会社『777パートナーズ』に売却を発表しました。
インターネット上では、このエバートンのニュースが駆け巡ると同時にマンチェスターシティに注目が集まりました。プレミアリーグが、昨年2月になりますが財務規定違反の疑惑を公表。収入と支出の不正操作だけでなく選手や監督の報酬に関する違反など計100件以上の疑惑行為があったと告発されていたようで、独立委員会による調査がありました。マンCについては、オーナーの資金投入疑惑など欧州サッカー連盟(UEFA)の規定にも違反している疑いがあるなど注目されています。
多くのファンが、マンチェスターシティに対する処遇に不満を持っていることから注目度は高くなりますが、エバートンを含めてリーグ・UEFAの今後の対応に注目です。
【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)




