今季の明治安田J1で最終節まで優勝を争った柏レイソル。その大躍進を黒子として支えたのが、通訳の村松尚登さん(52)だ。
スペイン人のリカルド・ロドリゲス監督の傍らに立ち、指揮官同様に情熱的な物言いで選手たちに的確に伝え続けた。
「自分の好きなサッカー観を持ってる監督の横で、それを伝える役割でタイトル争いができた。今まで僕が信じてたことが日本人には適してたんだなという証明になったし、やっててよかったなという思いです」
自身も筑波大卒業後にスペインへ渡り、12年間も活動した育成指導のスペシャリスト。上級ライセンスも取得している。スペインサッカーを熟知するからこそ、リカルド監督の考え方が瞬時にシンクロする。話の腰を折らないよう同時通訳さながらに言葉が飛び出す。これぞ職人芸と言わずして何を言おうか、である。
リカルドという男は典型的なスペイン人監督だという。戦術的なところは掘り下げつつも「最終的にはパッション(情熱)の塊っていう指導者がスペインは多い」。だから通訳として、エネルギッシュな姿そのままに演じている。
「監督が感情的にしゃべっている中、冷静に訳していたら伝わるものも伝わらない。頭が真っ白になったとしても言葉は続けなければいけない。そこでしらけたら本末転倒。声のボリューム、ジェスチャーにしろ圧倒的なエネルギーで言ってくるので、彼の熱量を受け取って背中を押してもらいながら訳しています」
思い立ったら行動へ、が信条だ。
「地に足が着いていないと言えばそれまでなんですけど、アンテナが響くところに動いて、いろんなところを飛び回ってきました」
昨年過ごした鳥栖に家族を残し、今は柏での1人暮らし。
「去年までの6回の引っ越しは家族も連れて行きましたが、子供は転校ばかりでした。上が16歳、2人目が14歳、下が11歳になって向こうで落ち着いているので僕が単身赴任で来ています」
それでも西日本でのアウェー戦となれば家族も駆けつけ、試合を楽しんでくれたという。
「今年レイソルと出会って、リカ(監督)と出会って充実した1年間を過ごせた。いい巡り合わせのところにたどり着けたのは、今まで転々となんか不安定だけれども、興味があるところに動き続けた結果だったのかなと思います」
この人なくして柏の大躍進はなかった。そう言っても過言ではない。【佐藤隆志】
◆村松尚登(むらまつ・なおと)1973年(昭48)6月8日生まれ。千葉県出身。八千代高-筑波大。指導者を目指して96年にバルセロナへ渡り、8クラブでアカデミーコーチを歴任。04年にスペイン協会上級コーチングランセンス取得。06年に帰国後、水戸、千葉、新潟、東京、鳥栖などでも通訳やコーチを務める。「テクニックはあるが、『サッカー』が下手な日本人」などの著書がある。




