日本代表のユニホームは99年からアディダスが手がけ、今回のワールドカップが5度目の“出場”となる。ロシア大会のユニホームの青色は、過去4大会とひと味違う。同社マーケティング事業本部の山口智久氏(35)らが「リアル・ジャパンブルー」を追求してたどりついた「藍」をベースにした青で、テーマは「勝ち色」だ。

 山口氏は15年末に今大会向けに製作を打診され、14年ブラジル大会の振り返りから始めた。国民の期待を集めた当時のユニホームは、アディダス史上最高の売り上げを出し、ビジネスとしては大成功だったが、結果は1次リーグ未勝利で敗退。「サポーターも選手も関係者も誰も喜んでいない」とその矛盾に向き合い、「日本が世界に勝つためのユニホーム」を根底に製作の第1歩を踏み出した。

 選手やサッカー関係者から意見を聞くと「日本=ジャパンブルーをシンプルに表現してほしい」との声が多く、過去の代表戦士たちは勝った時のユニホームに強い印象を抱いていることも分かった。大きなテーマを「スピリット・オブ・ビクトリー(勝利の魂)」に設定するとともに「日本のユニホームはなぜ青なのか」をリサーチした。

 サッカー関係者から明確な答えはなかったが、独自に調べると、19世紀に来日した英国の科学者、ロバート・W・アトキンソンが、町にあふれる藍染めののれんや衣服を見て「日本は美しい青の国」と表現した起源にたどりつく。また、武将たちが戦の前、鎧下の着衣を抗菌作用のある藍で染め、布をたたきながら染める作業「褐(かつ)」を「勝つ」にかけ、勝利の思いをすり込んだという話も知った。

 過去4大会のユニホームは全て「青=ジャパンブルー」だが、今回は「青は藍より出でて藍より青し」を地で行き、藍染めをモチーフにした「史上最も濃いブルー」に設定。さらに、日本がW杯に初出場してから20年目の節目の大会で「過去の選手、サポーターの思いを背負って臨めるように」と、前面に約800の「刺し小柄」と呼ばれる伝統的な刺しゅう模様を入れた。山口氏は「刺し子には生地を強くする意味もあります。歴史を紡ぐ糸に加え、日本を強くする意図も入っている」と説明した。

 今大会の出場国で、アディダスは最多の12カ国のユニホームを手がけている。世界の共通テーマは「オーセンティシティー(伝統の要素)とプログレッション(革新)」。ドイツは過去の優勝したユニホームのデザインを現代風にアレンジしており、日本は「過去20年」の思いと重みを日本らしいデザインで表現している。その思いを背負い、日本代表がロシアのピッチに立つ。【岩田千代巳】(おわり)