J1ベガルタ仙台の主将のMF富田晋伍(31)が長期離脱する見通しとなった。10日の鳥栖戦で負傷した。左太もも裏肉離れで全治約8週間の見込みと診断された。最終節の12月2日甲府戦に間に合うか、五分五分の状況だ。渡辺晋監督(43)は「痛いですよ」。約3年半に及ぶ渡辺監督の指揮下では、初の長期離脱である。

 渡辺監督は富田を信頼してきた。シーズン半ば、試合の見方について、私にこうアドバイスしてくれた。「富田がインターセプトするところを見てほしい。あいつは先に動いているよ。あそこまでボールを奪いきれる選手は、見たことがない」と。

 去年。フィジカルの練習で、コーンを4つほど並べ、コーンまで走って寄せる練習をした。多くの選手は約30センチ前まで近づき止まるが、富田はコーンまで一直線に走り、またいで止まってみせたという。「あくまでフィジカル練習だけど、あいつが相手の懐まで入っていける証しだと思うよ。30センチの差かもしれないけど」。身長は169センチ。チームのレギュラー陣では1番小柄だ。そんな小兵が、するりと相手に近づき、ボールを奪う。守備的ボランチの富田のプレーに、より一層注目するようになった。

 今回の故障は、そんな鋭い寄せが原因だった。自陣内での味方のパスミスから生まれたピンチの芽を、刈り取った。冒頭にも書いた通り、この故障は悲劇だ。だが、富田らしさを全面に出した、名誉ある故障だと思う。1日も早い、戦列復帰を願うばかりだ。

 16日の東京戦。このコラムを執筆中には、誰が富田の代役を務めるか、わからない。その選手は別に富田らしいプレーを出す必要はないが、ベガルタの中盤が大きく変わることは間違いない。富田のためにも、チーム一丸となって上位進出を果たして欲しい。


 ◆秋吉裕介(あきよし・ゆうすけ)1993年(平5)6月28日、横浜市生まれ。16年入社。高校野球取材班、スポーツ部を経て、同年11月より仙台担当。