日本女子代表なでしこジャパンのGK山根恵里奈(26=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)ら、なでしこリーグ所属選手8人が13日、東日本大震災から6年がたった東電福島第1原発とJヴィレッジを訪れた。全員、この地が活動拠点だった中高一貫の養成施設「JFAアカデミー福島」の出身。かつて共同生活した寮や通っていた楢葉中、富岡高、芝の再養生など復旧工事が進むJヴィレッジ、使っていた自転車がそのまま残っていた駐輪場など、思い入れのある場所を見て回った。
山根は高校卒業後、東電に就職。福島第2原発に配属されて広報部で働きながら、女子クラブの東京電力マリーゼで活動した。第1原発も、研修で足を運んだことがある。困難な廃炉作業に直面する、かつての“職場”を、なでしこリーガーとして初めて訪問。バスの中から1~4号機を視察したり、約6000人の作業員が利用する食堂(15年5月に運用が始まった大型休憩所2階)で昼食を取ったりした。
まだまだ震災の爪痕が生々しく残る原子炉建屋を目の当たりにし「実際に自分の目で見て、事の大きさを思い知らされました」。一方で新たに完成した大型休憩所や新事務本館、地表面をモルタルで覆って構内の空間放射線量を低減させ、防護服なしでも作業できるようになった状況も見た。前向きな部分も確認し「元の姿を知っているだけに、時間が止まったままの場所もあったし、反対に前に進んでいるところもあった」と現状を受け止めた。
6年間、住んでいた福島への思いは今も胸の中にある。あいさつのため、約450人の作業員の前に立つと涙が止まらなくなった。震災が発生した3・11は宮崎キャンプの最中だった。「移籍してサッカーを続けるか、やめて福島に残るか本当に悩みました。そこで背中を押してくれたのが、福島の人たちでした。私たちは福島に育ててもらったサッカー選手だと思いながら毎日ピッチに立っていますし、いつも福島のことが心の中にあります」と感謝した。
18年夏の一部再開、19年4月の全面開業を目指すJヴィレッジは、20年東京五輪の男女日本代表が直前合宿を張るなど、強化拠点にすることが決まっている。「絶対に代表に入って、また福島に戻ってきます」と山根。JFAアカデミー福島1期生のノジマステラ神奈川相模原MF田中陽子(23)も「その時、ここで育った私たちが代表として帰ってくることに意味がありますし、使命だと思っています。しっかり代表に入って、多くの人の目に触れる存在になる。形にして示すことで福島に貢献、恩返ししたい」と凱旋(がいせん)を誓った。
最後は楢葉町、広野町、いわき市の児童34人を招いてサッカー教室を行い、ともに笑顔になった。田中は「こうして子供たちと一緒にサッカーできるなんて、6年前は想像もできなかった。幸せです」と希望を見いだし、山根も同調した。「町の復活を実感しています。遠く離れていても、サッカーを続けることで恩返しできたら。福島、東北が笑顔になるきっかけになれば」。
田嶋会長も言う。「私たちにできることは放射線量を下げることでも、廃炉を進めることでもない。この地にサッカーを戻して、サポートしていきたい」。町民の帰還が進みつつある“故郷”のため、なでしこジャパンとして東京五輪を目指す決意をより固める福島再訪になった。【木下淳】
◆今回の復興支援活動に参加した、なでしこリーガー8人 山根、若林美里(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)川島はるな、田中、吉見夏稀、和田奈央子(ノジマステラ神奈川相模原)浜田遥、本多由佳(マイナビベガルタ仙台レディース)
※13年に引退した元仙台DFの下小鶴綾さんも参加

