湘南ベルマーレ曹貴裁監督(49)は、浦和レッズ戦勝利後の会見で、ホーム最終戦セレモニーで引退を発表したDF島村毅(33)の妻に、今季の起用が少なかったことをわびたところ、泣きながら怒られたと明かした。

島村は早大から、J2時代の2008年(平20)に入団した最古参の選手だ。入団当時はFWだったが、183センチ、76キロの大きな体を見込まれ、DFにコンバートされ、その後も状況に応じて両ポジションで起用されるユーティリティーさも売りだった。島村が入団当時、ヘッドコーチだった曹監督は「ずっと前(FW)の選手がDFになった。常に出ていた選手じゃなかったけれど、自分より若い選手がレギュラーになり、自分が出られない中でも明るくチームを思ってやってきた選手。だからこそ大事な時の得点、記憶に残るシーンを演出してくれた選手。決してうまい選手じゃなかったですけど、次につながる選手、子どもたちの励みになると思う」と評価した。

一方で、曹監督は「ただ、1こ…」と言い、島村の妻にセレモニー後、怒られたと明かした。

曹監督 終わった後、奥様に「お疲れさまでした。今年、あまり使ってあげられなくて、ごめんね」と言ったら、泣きながら「本当ですよ」と言われた。奥様には申し訳ない。

島村はプロ11年でJ1で84試合出場6得点、リーグカップは12試合出場1得点、J2では116試合出場13得点、天皇杯では15試合に出場し1得点の成績を残した。ただ今季は、J1リーグ戦1試合、YBCルヴァンカップ3試合、天皇杯2試合の出場にとどまっていた。曹監督の思わぬ“やっちまったエピソード”に会見場は笑いに包まれた。

この日、湘南は浦和に勝ったが、勝ち点で並んでいたサガン鳥栖、名古屋グランパスも勝ったため、アウェーで名古屋と直接対決する12月1日の最終戦に残留をかけることになった。

名古屋とは16年にも最終節で対戦し、既に降格が決まっていた湘南が3-1で大勝し、93年のJリーグ開幕から参戦する“オリジナル10”の名古屋を初の降格に追い込んだ。“因縁マッチ”第2ラウンドが、2年の時を経て実現する。

曹監督は質疑応答の中で「名古屋戦は得失点差(2)あり引き分けでも良い状況だが、選手にはどう伝える?」と質問を受けた。6月のワールドカップ(W杯)ロシア大会では、日本代表が1次リーグ最終戦となった同28日のポーランド戦で、残り10分にパス回しをして時間を稼ぎ、同時刻にセネガルがコロンビアに敗れたことで、フェアプレーポイントで2位で決勝トーナメントに進出したことに賛否両論が出た。名古屋-湘南も、互いに残留がかかるだけに、他会場の状況を見なければいけない状況が出てくる可能性がある。

曹監督は「引き分けでも良いと思って、お互いにやるとしたら、最初から攻めないで後ろで回すしかないが、それはショーとしては間違っている。ただ状況は考えたい。何も知らないで突っ込んでいけというのは、今の選手たちには通用しない」と語った。

名古屋とは3月のホーム戦は0-0ドローで、J2を戦った17年もホーム戦は2-1勝利、アウェー戦は2-3敗戦と拮抗(きっこう)した展開となった。曹監督は「名古屋さんと、ホームでやった時は0-0。その決着を着けにいく。(名古屋監督の風間)八宏さんも、そのように思われると思うし、僕らのスタンスも変えない。お互いに倒しに行く気持ちは、あるんじゃないでしょうか?」と真っ向勝負を誓った。【村上幸将】