残り3戦を首位で迎えたFC東京だったが、残留争いの中にいる湘南ベルマーレに対して痛いドロー。勝った横浜F・マリノスに首位を明け渡した。

試合を終えた長谷川健太監督は淡々と、低い声色で切り出した。

「なんとか引き分けてよかったなと。(主将の)MF東も話して、『固かったです』と。久しぶりに(ホームに)戻って、やってやるぞという気持ちが若干、空回りしてしまった」。

ラグビーW杯の開催で味スタが試合会場となり、東京は8月17日の広島戦を最後に約3カ月、ホームを離れていた。その間のアウェー8連戦を終えて首位。堂々の凱旋(がいせん)だった。久々のホームで、高ぶる気持ちが平常心を乱した。DF森重真人は「固い、ばたついていると感じられた」と、ピッチでの感覚を率直に語った。

得意の前線からのプレスがはまらないまま、前半36分に失点を許す。セカンドボールを拾えず、リズムをつかみきれない。DFラインを大きく上げて球際で激しい湘南に後手に回った。指揮官は「(攻守の)切り替えの部分、そのあとの精度が、湘南のほうが上回っていた。難しい展開になってしまってもしょうがない」。久々のホーム、残り3戦でいやが応でも視野に入るチーム初優勝-。いくら意識の外に置こうとしても、体に力が入った。森重は「優勝は、なかなか簡単にはいかない」とつぶやいた。

頼れる代表組も、この日は輝きを失った。ハイプレスのスイッチ役である快足FW永井謙佑は運動量、迫力ともに欠き、途中交代。守備の要であるMF橋本拳人は自陣内でボールを奪われるミスが失点につながり「個人的には全然だめだった」と責任を背負った。DF室屋成を含め、19日に国際親善試合ベネズエラ戦をこなしてから中3日。長谷川監督は「代表組がいつもよりは疲れていたのは否めない」とし「そんなことではしょうがない。もっとたくましくなってほしい」と続けた。残り2戦にして、首位という有利な立場を失った。しかし最終節に横浜との直接対決を控えており、2勝でシーズンを締めることで自力優勝はまだ可能な位置にいる。森重が土壇場でミドルシュートを突き刺し、負けずに終えた。「勝ち点1をとって帰れたことが最終的によかったと思えるよう、準備をしたい」と森重。クラブにずっとついて回る勝負弱いイメージから脱却できるか、残りは2戦となった。【岡崎悠利】