消滅危機が続くJ1サガン鳥栖が、存続の岐路に立たされた。鳥栖は26日、株主総会と19年度決算報告を行い、約20億1486万9000円の赤字を計上。18年度の約5億8100万円を大幅に更新した。一方で純資産は2100万円。現状のままでは、仮にJリーグからリーグ戦安定開催融資の特別措置(J1満額3億5000万円)と今季の配分金(満額約3億5000万円)を早期受給しても今季を乗り切ることは難しい。最悪の場合はチーム消滅、もしくはJ3以下降格などの判断が、来月から本格協議される可能性が出てきた。

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自ら招いた存続危機に、オンラインで取材に応じた竹原社長は「天文学的な数字の赤字を出しているので、存続危機という言葉が合うのか、明日はあるのかということですが、これも経済」と言葉を絞り出した。「いかなる手段を取っても存続に向けて全力の努力をします」と話した。

昨年度(19年2月~20年1月)の決算は20億円を超える赤字で、赤字計上は2季連続となった。24億円だった人件費を半分以下の11億円6900万円に減らしても、巨額の赤字に加え、約10億円のスポンサー料減など、現状ではクラブ存続には致命的な経営不振を挽回する余力はなさそうだ。

Jリーグ村井満チェアマンは「新型コロナウイルスの影響で、Jクラブがつぶれることはないようにしたい」とは言っていたが、鳥栖の場合は以前から抱えた問題。Jリーグ安定開催融資の特別措置3億5000万円は、3年間で返せる見通しが立たないと貸せない。現段階ではその見込みはなく、融資できない可能性もある。配分金約3億5000万円と合わせ、仮に満額の7億円の早期支給が実現したとしても、現状では今季途中で資金がショートする可能性が高い。

鳥栖は存続できるのか? 現段階で存続は難しい。Jリーグ関係者は言葉を選びながらも厳しい言葉を並べた。「鳥栖の資金難は3年前からの話で、昨年夏からJでは救済策を探っていたが、解決法は見つからなかった。今のままなら、存続は難しい。まず今季の公式戦には参加できないかもしれない」という。

今後、鳥栖が自力でスポンサーや投資家を見つけるか、銀行や自治体からの融資を取り付けるほかに解決策はない。不発に終わった場合「(1)クラブ消滅(2)J3以下降格」の措置が考えられる。早ければ来月19日の理事会で、対処法が話し合われる可能性がある。鳥栖が打開策を提示し、Jリーグを納得させない限り、今季のリーグ戦から排除し、消滅の場合はそのまま退出、J3以下降格の場合にはクラブ経営の正常化やスリム化などの方策を立てて、来季に備えることになる。

ただJリーグとして、鳥栖の所属選手は救済に踏み切ることが考えられる。他のクラブも経営は苦しいが、移籍あっせんや鳥栖に限る移籍特別ルールを作る可能性がある。選手会とも相談して救済策を練ることになりそうだ。

攻撃的な経営戦略が招いた今回の存続危機。無謀な挑戦が終焉(しゅうえん)を迎えようとしている。トップの方針、判断1つでクラブの運命が左右される。選手、サポーターは、祈る気持ちで経営陣を見つめている。存続へ、いばらの道は続く。【盧載鎭】

◆サガン鳥栖 97年に創設され、99年のJリーグ2部制移行に伴いJ2参加。11年にJ2を2位でJ1初昇格を決め、以降降格なし。J1最高順位は12年と14年の5位。今季は金明輝監督が指揮を執り、FW豊田陽平、MF高橋秀人らが所属。チーム名は長い年月をかけて砂粒が固まって砂岩「サガン」となり小さな力を集結し立ち向かうことと「佐賀の」に由来。チームカラーはブルーとピンク。本拠地は駅前不動産スタジアム(2万4490人)。

◆J1クラブの赤字決算 鳥栖は18年度も5億8100万円の赤字で、Jリーグ全55クラブで最大だった。営業収入が現行(2月~翌年1月)の決算期となった06年度以降、最も赤字額が多かったのは06年度の東京V(当時J2)の8億7800万円だったが、19年度の鳥栖はこれを大幅に更新した。過去13年度の最多赤字額の平均は約4億4400万円となっている。なお、最近発表された19年度の他クラブの決算では、仙台が4億2819万7000円の赤字となった。一方、浦和は純利益6198万円で9年連続の黒字となっている。