創設14年目の藤枝MYFCが悲願を達成した。アウェーでの長野戦は0-0のスコアレスドロー。勝ち点1を積み上げ、2位で来季のJ2昇格を決めた。 昨季途中から指揮を執った須藤大輔監督(45)のもとで、見る人を魅了する超攻撃的サッカーを構築。選手とスタッフ、サポーターも巻き込んだ「一体感」で偉業を成し遂げた。来季は清水と磐田を含めた3クラブがJ2でしのぎを削る。

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最低気温8度の寒さも吹き飛ばす熱気だった。藤枝は最終戦でも負けない強さを見せつけた。須藤監督はコーチ陣らと歓喜し、選手らはピッチで喜びに浸った。駆けつけたサポーターは400人以上。ベンチ外メンバーも加わった記念撮影では全員が笑顔で納まった。同監督は「歴史の扉を開くことができた」。試合後、戦い抜いた選手たちを見つめる指揮官の表情も誇らしげだった。

理想と結果を求める挑戦だった。須藤監督は昨夏に就任すると、宣言した。「僕は3点取られても4点取り返すサッカーをする」。リスクも伴う戦術に否定的な意見もあったが、信念を貫いた。練習では基礎を徹底。同時に最後まで走りきるための走力と球際で負けない強度の高さを求めた。

戦術のベースはハードワークを欠かさないこと。主将のMF杉田真彦(27)は「監督を信じてやれば絶対にいいサッカーができると思った」。毎日違う練習メニューを組み、監督自身はサッカーを研究した。練習後にスタッフらと海外サッカーを見るのが日課。欧州2部リーグのチーム戦術を参考にすることもあった。

日々の練習で理想のスタイルに近づけ、結果も伴うことで自信もつけた。DF鈴木翔太(26)は「須藤さんのサッカーができればどこにも負けないと思った」。今季3得点以上を挙げた試合は11試合。攻め抜くスタイルでJ3を席巻した。

今季のホーム平均入場者数はクラブ最多を更新。選手自身がプレーを楽しみ、応援するサポーターも喜ぶ「劇場型」のチームが完成した。来季はクラブ史上初のJ2。雲の上の存在だった清水と磐田と肩を並べた。須藤監督は「こんな千載一遇のチャンスはない。今までの序列を変えるつもりでぶつかっていく」。Jリーグの歴史では後れを取ったが、サッカーの街の元祖は藤枝。来季はJ2に新風を吹き込む。【神谷亮磨】

○…MF横山暁之(25)が今季チーム最多13得点を挙げて攻撃陣を引っ張った。この日の試合後は「素直にうれしかった」と安堵(あんど)の笑みを浮かべた。これまではゴールを演出するチャンスメークが多かったが、今季は得点にこだわった。開幕から7試合連続無得点と序盤は出遅れたが、夏場には3戦連発をマーク。ホーム最終戦となった前節福島戦でも2得点を挙げるなど、勝負強さも光った。横山は「僕を信じて使ってくれた監督に感謝したい。来年はもっとゴールを決めたい」と来季を見据えた。