<陸上:日本選手権>◇2日目◇26日◇広島広域公園陸上競技場

 日本女子短距離のエース福島千里(21=北海道ハイテクAC)が、200メートルで23秒00の日本新記録で初優勝した。自身が5月に出した23秒14の日本記録を塗り替え、世界選手権(8月、ベルリン)の参加標準記録Aに到達。初の世界選手権代表を決めた。リレーを含めると今季5度目の日本新で、27日から始まる100メートルとの2冠が見えてきた。

 福島のフィニッシュと同時に、タイマーは22秒97で止まった。会場は、どよめいた。正式タイムは23秒00に訂正されたが、世界の扉を開くA標準に達した。堂々の記録で、代表切符を手に入れた。

 「自分の中で『もうちょっと』という部分があるんですけど、いいレースができて、とても良かったです。本当はランニングタイム(速報値)が、あのまま止まってくれたら良かったんですけど…。確定が23秒00だったんで、本当に残念です」。日本新+A標準に届く好記録にも、22秒台を逃した悔しさが入り交じった。

 得意のスタートで飛び出し、中盤以降も硬くならずに、走り切った。快晴で気温29度、固くて反発力がある広島のトラックに加え、追い風1・7メートル。好条件が重なる幸運もあった。中村監督は「このくらいの記録は出てもおかしくない。何が起きても不思議でないのが、福島なんです」と評価した。

 この記録は、いくつもの意味を持つ。B標準なら1人しか選ばれない代表が、A標準突破により、日本からA標準1人+B標準1人の出場が可能になる。親友でライバルの高橋も、世界舞台に引き上げられる。また、すでにA標準を突破している100メートルを含め、100メートルと200メートルでA標準を突破しての世界大会出場は、日本女子初の快挙になった。

 「この大きい舞台で、この記録を出せたので、世界選手権でもっと伸びたらいいですね」と福島。この記録なら、世界選手権でも1次予選を突破できる。それもまた、日本史上初になる。27日は、21歳の誕生日。おっとり口調の細身のスプリンターは、急激な成長曲線を描いている。【佐々木一郎】