大阪国際女子マラソンが31日、大会初の長居公園周回コース(午後0時10分、1周約2・8キロ)で行われる。東京オリンピック(五輪)代表の一山麻緒(23=ワコール)と前田穂南(24=天満屋)の直接対決に注目が集まる一方、プロランナーの岩出玲亜(26=千葉陸協)も実力者のひとりで、見逃せない。コロナ禍で、新たな所属先が決まらない中、クラウドファンディングで支えてくれた人たちへの感謝の思いを胸にスタートラインに立つ。

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不安、祈り、感謝、そして決意-。さまざまな思いを抱いて、岩出が新たな1歩を踏み出す。

昨年8月で前所属先との契約が満了し、現在はフリー。10代マラソン女子日本最高記録を持ち、自己ベストは2時間23分52秒のランナーも今、所属先はない。コロナ禍にあって、スポンサー獲得は苦戦している。「どの企業も状況は厳しく、新規のアスリートを求めていないと多々感じる」と吐露する。用具面ではアディダスと契約できたが、活動費は練習会イベント開催などで捻出する。

試練は大会へ向けても続いた。好調を実感していた9日。練習中に転倒し、左膝を強打。痛みは激しく、約1週間前からは走らずに調整した。不安は残る。ただ「勇気のいる決断だったけれど、それまでの練習でやれることはやってきた」。レース前日の30日は久しぶりのジョグで、時間は15分ほど。膝の状態が良化していることを祈りつつ、痛み止めを服用して本番に臨む。「今回のペース設定はゆっくり。(3月の)名古屋を見据え、(2時間)25分を切れれば」と話す。

欠場の選択肢もある中で、出ると決めたのには理由がある。2月下旬の合宿費として50万円をクラウドファンディングで募ったところ、わずか半日で目標額に達し、現時点で100万円近い支援が集まる。「応援してくれる人の存在を身に染みて感じているからこそ、あきらめてはいけないと思った」。支えてくれた感謝を示したかった。

新たな所属先を探す上でも、今大会が重要な機会であると認識している。「アピールにつながれば」。無観客、異例の約15周の周回コースとなった一戦で、画面越しに、心に響くような走りを誓う。【奥岡幹浩】