駒大が、自らの大会記録を4分21秒も更新する5時間6分47秒で3連覇を果たした。同校史上3回目となる出雲駅伝との2冠。スーパールーキー佐藤圭汰(1年)の激走で4位から首位と1秒差の2位まで浮上し、以降は首位を独走。7区で大エース田沢廉(4年)が区間新を43秒も更新する49分38秒の爆走で、完勝した。箱根では三度目の正直で3冠に挑む。2位は昨年4位の国学院大、箱根王者の青学大は3位だった。

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後続する選手がいないことを確認すると、アンカーの花尾(3年)は右手を高く突き上げ、ゴールテープを切った。過去2年はコロナ禍で集合禁止。仲間の元へ飛び込めたのは3年ぶり。現メンバーから初の胴上げをされた大八木監督(64)は「やるっていうもんだから、まあいいかなって」と照れ笑いを浮かべた。

試合が動いたのは2区だった。1区の円から佐藤にタスキが渡った時点では19秒差の4位。持ち前のスピードで追い上げ、2・7キロでトップの創価大に肩を並べた。最後の直線で抜かれたが、1秒差の2位でつないだ。

指揮官が「前半の流れを作るキーマン」とした大物ルーキーは、先月の出雲駅伝に続き区間新記録の快走も「詰めが甘かった」と悔いる。京都・洛南高で指導した奥村監督は「(当時から)見てる先が人と違っていた」と証言。20年12月の全国高校駅伝では日本選手だけの大会新記録の3位も、歓喜に沸くチームメートを尻目に1人膝をついた。「ケニア人留学生にあっという間に置いていかれた」。世界目線。そんなルーキーを優しく見守る雰囲気がいまのチームにはある。

「原点と○」。その○をその年度ごとに考えるのが20年以上続く伝統で、本年度は「原点と環」。1つになるという意味を込め、最上級生が決めた。学年の間の溝を埋めたい、という思いがあった。

7区で驚異的な区間新の爆走で勝利を決定付けた田沢は「上級生が後輩に話しかけたり、積極的にコミュニケーションを取るようになった」と言う。世界を視野に、ずぬけた質と量で練習する先輩は、時に近寄り難い存在だった。それを変えた。いじられキャラの佐藤に絡み、笑いでチームを融合させる。4年生が空気感を和らげた。

「今年は絶対に監督に3冠をプレゼントします」。今春、選手たちは誓った。大学としては王手をかけた過去2回の挑戦はともに箱根2位に敗れている。指揮官は「選手たちが『やりましょう』と言うのであれば、おれも本気でやろうかなと」。自発的な誓いに、これまでにない可能性を感じている。

佐藤が「3冠を取りたいです」と堂々と言えば、田沢も「チームでも個人でも新記録を」と息巻く。1つの「環」となり、走り抜く。【竹本穂乃加】

◆佐藤圭汰(さとう・けいた)2004年(平16)1月22日生まれ、京都府出身。京都・洛南高時代には1500メートル、3000メートル、5000メートルの3種目で高校記録を樹立。長身から繰り出すストライドの大きな走りが特徴で3年時の全国高校駅伝ではエース区間の3区で日本選手歴代最高記録を更新。駒大進学後の今年5月に5000メートルのU20日本記録も塗り替えた。身長184センチ。

<駒大の過去2度の3冠挑戦>

◆98年度 藤田敦史(4年)を中心に出雲、全日本は中盤から首位を快走して2冠。箱根では、往路は2分20秒差の2位でタスキを受けた4区の藤田が区間新の激走で1位に。だが、58秒差で逃げ切り態勢だった復路9区でダークホースの順大に逆転を許し、初優勝と史上2校目の3冠の夢が散った。

◆13年度 窪田忍(4年)油布郁人(4年)中村匠吾(3年)村山謙太(3年)ら強力布陣で、出雲は大会新、全日本は2位に3分10秒差の完勝。箱根では、往路は59秒差で東洋大を追う2位。逆転圏内で迎えた復路では、7、8区には1年生を起用せざるを得ず、9区のエース窪田にタスキが渡った時点で3分40秒差。2位に敗れ、史上4校目の3冠はならず。