国学院大の島崎慎愛(4年)は“実質5年生”で箱根駅伝に挑む。最終学年で臨んだ前回は1区起用予定も、4日前に右太ももを故障して欠場。そのリベンジとチームの初優勝のために、実業団の内定を断って卒業を延ばした。希望区間通り、過去2回経験した6区にエントリー。もう悔いは残さない。

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5年目の箱根駅伝のテーマは「悔いなく走る」。島崎はこの1年、この言葉を心に刻んできた。今季のチームは10月の出雲、11月の全日本ともに駒大に続く2位。“歴代最強”“初の総合優勝”と期待値が急上昇しているが「プレッシャーは感じていないですね」と、しっかりと地に足がついている。

4年で迎えた前回の箱根は、1区を走る予定だった。出雲、全日本と1区で6位、3位と好結果を残し、前田康弘監督の期待と信頼も高かった。ところが大会4日前に右太もも裏を痛めて欠場。「好調だったし、自信もあった。悔しさだけが残った」。涙が止まらなかった。

半年間の留年後に、実業団への入社が内定していた。しかし、1月に群馬県に帰省して親と話し合い、卒業をさらに半年延ばして“5年生”で箱根に再挑戦する決断をした。「もう1度駅伝を走って監督や親に恩返しがしたいと思った」。1年時に選手登録されていなかったため、4回目の資格があった。

覚悟の5年目は苦しんだ。中西大翔主将(4年)ら4本柱を軸にチームのレベルが上がった。練習のペースに対応できず、上期は結果が残せなかった。8月には新型コロナウイルスに感染。10月まで思うように練習が積めず、復帰レースの11月の全日本も1区18位と出遅れた。

それでも「状態は悪くない」と前を向いた。座右の銘は沖縄方言の『なんくるないさ』。“努力をしていれば自然となんとかなる”という意味。「自分の両親が沖縄出身ということもあり、この言葉をずっと信じています」と島崎。そして、全日本以降は「去年より高いレベルの練習が積めるようになった」という。

希望区間の通り、2年と3年で走った6区にエントリーされた。58分39秒で区間4位と健闘した3年時を超える手応えを感じている。「過去2回より力はついている。目標は57分台。最後の箱根で区間賞を取る。それが支えてくれた人たちへの最高の恩返しになる」。島崎の思いが結実した時、悲願の初優勝も現実味を帯びてくる。【首藤正徳】

◆島崎慎愛(しまざき・よしのり)2000年(平12)1月16日、群馬県出身。藤岡東中-藤岡中央高。箱根駅伝は6区で2年8位、3年4位。21年の日本学生ハーフマラソンで1時間3分8秒で3位。1万メートルのベスト記録は28分27秒98。卒業後は実業団のサンベルクスで競技を続ける。164・5センチ、52キロ。