<全国高校バスケット選抜優勝大会:山形商78-62岐阜女>◇女子準決勝◇27日◇東京体育館

 山形商が県勢初、東北勢としては38年ぶりの決勝に駒を進めた。07~09年に3年連続で敗退していたセミファイナルで、岐阜女に完勝。同校から初めて2人同時にWリーグ入りする大沼美琴主将と仲野由真の3年生コンビが、それぞれチーム1位の21得点、同2位の18得点と活躍。伝統校の歴史を塗り替えた。

 22年連続22度目の出場にして、初めて山形商が準決勝の壁を破った。それも、敗退の歴史がうそのような快勝で-。開始から10点を連続奪取すると、第1クオーター(Q)途中から15連続、第2Qにも13連続ポイント。守っては第2Qに6点しか与えず、攻防の局面で岐阜女を圧倒した。第4Qにリードを26点まで広げると、先発5人全員をベンチに下げる完勝劇だった。

 国内女子最高峰のWリーグに進む2人が、夢舞台に導いた。JX入りする大沼は「注目される重圧は正直ある」と言いながらも両軍最多の21得点。源には、ぶれない向上心がある。OGの姉美咲さん(21)と同じデンソーからも誘われたが「姉を追い続けても自分の成長がない」。父孝義さん(44)が「美琴は、よく家で美咲の映像を見てモチベーションを上げている」と話すほど尊敬していても、あえて先発争いの厳しいJXを選択したほどだ。その姉は07、08年に連続3位。試合前日に姉から「今年こそ(4強を)超えろよ」と言われた妹が壁を破った。

 アイシンAWに進む仲野も、2度の大けがを乗り越えた。中学2年の冬と高校1年の夏、同じ右膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂した。診断は、それぞれ全治1年。気の遠くなる時間に裏方に回る覚悟すらしたが「日本一」の夢のため、つらいリハビリに耐えてきた。

 仲野のほか、黒田陽菜と小林彩菜(ともに3年)も前十字靱帯を断裂。あまりの不吉さに今年1月、山形商体育館で「おはらい」を受けた。だが大沼は「負傷が多い分、私たちの代は仲間への思いが強い」。高橋仁監督(54)も「戦力的には落ちてるのにねぇ」と説明できない成長があった。

 今日28日の決勝。相手は昨年高校3冠の札幌山の手(北海道)に決まった。準優勝した国体では同校中心の北海道選抜に70-72で惜敗した。山形県勢は総体、国体、選抜の主要3大会で優勝したことがない。女王に借りを返した時、歴史の扉が開かれる。【木下淳】