<全国高校バスケット選抜優勝大会:沼津中央95-92若松商>◇3日目◇25日◇男子2回戦◇広島グリーンアリーナ

 2回戦から登場した昨年3位の沼津中央(静岡)がヒヤヒヤ発進した。若松商(福島)に前半で61-44とリードし楽勝ムードも、後半は相手のオールコートプレスに戸惑い、残り3分で逆転を許した。最後は望月孝祐主将(3年)と小松京太(3年)のバスケットカウントで再逆転し辛勝。苦しんで3年連続のベスト16にコマを進めた。きょう26日は札幌日大(北海道)と対戦する。

 負けてもおかしくない試合で勝利をもぎ取った。勝った瞬間も、選手に笑顔はない。杉村敏英監督(63)は「これぞスラムダンク(笑い)。全国の初戦は魔物がすんでるね。心臓に悪かった」。バスケットを題材にした人気コミックの名を挙げ、ハラハラ再逆転勝ちを振り返った。

 大量リードで迎えた後半、相手のオールコートプレスに足が止まった。簡単にパスカットされ、見る見る点差が縮まる。望月主将は「受け身になってパスコースが探せなかった」。残り3分で87-88と逆転されると杉村監督はタイムアウトを取り「(17点差を逆転した)県大会決勝の藤枝明誠戦を思い出せ!」とハッパを掛けた。そこから再び、持ち味の「走るバスケ」を取り戻す。相手以上の気迫のプレスでスチールし速攻。望月主将と小松の連続バスケットカウントで再逆転し逃げ切った。

 小松は北海道出身。中学まで無名の選手も、杉村監督が「鍛えたらおもしろい選手になる」と才能を見抜き同校に誘った。小松は「実は母と毎日けんかばかりで、親元から離れたくて入学した」。寮生活で洗濯、食器洗いを毎日続け、半年後には母悦津子さん(45)への尊敬と感謝が芽生えた。「今は毎日、メールして昔のけんかがウソみたい。今日も会場に来てくれた」。この日も背中越しのアシストパスなど個人技を見せ、14得点5アシスト3スチールと躍動し「沼津に来て良かった」と振り返った。

 小松は沼津中央が全国初出場した10年、同じように競った初戦(対東海大相模)で大きなミスをした。「1点リードの最後残り数秒で相手にパスをあげちゃってシュートされた」。味方のブロックで83-82で辛勝したが「負けていたら僕の責任だった。今回は2年前の借りを返せた」。

 大東文化大に進学する。受験の時は東京・品川駅で電車を乗り間違え、池袋までたどり着けずに泣きそうになったが「コート内では迷いませんよ」と笑う。きょう26日の札幌日大戦では、故郷の選手に成長した姿を見せつける。【岩田千代巳】