世界22位の大坂なおみ(20=日清食品)が、シングルスで4大大会通算23勝、ツアー通算72勝を誇る元世界女王セリーナ・ウィリアムズ(36=米国)を日本女子で初めて下した。産休から復帰2大会目の相手に6-3、6-2のストレート勝ち。これまで5人が9度対戦しセットさえ奪えなかった強敵から金星を挙げた。2回戦では同4位のスビトリナ(ウクライナ)と対戦する。

 日本女子で初めて4大大会に次ぐ規模の大会で優勝してから、わずか3日後。大坂が再び歴史を動かした。過去、日本女子がセットさえ奪えなかった女帝にストレート勝ちした。それもテニスを始めた3歳から憧れ続けた相手から、初対戦で金星を挙げ「夢がかなった。そして勝てたんだから、なおさらうれしい」と照れ笑いした。

 産休明けとはいえ、筋肉のよろいをまとうセリーナの圧迫感はハンパではない。身長では180センチと5センチ高いはずの大坂が、小さく見えた。歴代2位の4大大会23勝、現役最多のツアー72勝の実績。どんなに世界ランクが下がっても、相手に大きなプレッシャーをかけていた。大坂もセリーナが打つたび「これがセリーナのプレーね」と手が震えた。

 最初の3ゲームは「本当に緊張した」という。自分の最初のサービスゲームで2度のダブルフォールト。しかし、セリーナの攻めを何とか食い止め、我慢したのが大きかった。2-3から5ゲームを連取。そのまま最後まで1度もサービスゲームを落とさず「自分に集中した」と快勝した。

 先週のBNPパリバ・オープンでは1回戦の相手がシャラポワ(ロシア)で、今大会はセリーナ。2大会連続で元世界1位と顔を合わせる大坂のドロー運のなさが話題となった。しかし、合わせてツアー108勝、4大大会28勝の2人に1セットも与えなかった。運がなかったのは、歴史に名を残す相手だった。

 テニスを始めた時に憧れた3選手が、セリーナとビーナスのウィリアムズ姉妹とシャラポワだった。これでその3選手を丸のみ。先週は現在世界1位のハレプ(ルーマニア)も下した。ビッグネームを連破しながら目下8連勝と、誰も大坂を止められない。「自分の存在を認めさせたかった」。セリーナに存在を認識させただけでなく、和製セリーナとして、“後継者”にも名乗りを上げた。