バドミントン再春館製薬所元監督で、現在岐阜トリッキーパンダースに所属する今井彰宏氏(48)が15日、前チーム在籍時に金銭的不正行為をしていたとされる問題について、弁護士を通じて報道各社に説明文を発表した。

 以下は全文。

1、はじめに

 今井は、選手が競技に専念できることが最も重視されるべきだと考えております。この観点からは、報道されている今井の金銭問題も、再春館製薬所のパワハラ問題も、必ずしも選手に直接関係する問題ではありません。この点は、選手自身が問題の中心であった相撲協会やレスリング協会とは大きく異なる点です。報道機関のみなさまにおかれましては、選手のことを第一に考えた冷静な対応を期待いたします。

 その点で、今井においても一定の説明をすることが、報道が徒に加速して選手が巻き込まれることを防ぐのに必要だと判断するに至り、可能な範囲でご説明することとした次第です。

 2、金銭問題について

 日本バドミントン協会及び熊本県バドミントン協会に対しては、再春館製薬所から提出されたとされる告発状や調査報告書といった関係資料の提示を求めています。しかし、未だに開示がされないどころか、何の応答もありません。そのため、今井としては、正確かつ有効な説明や反論は困難です。

 もっとも、次の点については、明確にお伝えしたいと思います。

 選手が海外で試合をした結果、一定の賞金が支払われることがあります。今井が、選手の同意を得て、その一部を預かったことがあるのは事実です。しかし、それは、選手やバドミントン部のために使うためであり、自分の利益のために集めたものではありません。そして、実際に、今井の私的な目的で使ったこともありません。

 賞金が今井の個人名義の銀行口座に振り込まれたことがあるのも事実です。振り込んだのは、熊本県バドミントン協会です。同協会は、今井が振り込ませたと主張しているようですが、少し考えれば分かるとおり、仮に今井が振り込ませようとしても、同協会がこれを拒否することは容易です。選手に意向を確認したり、所属先の会社に問い合わせることもできます。今井が「振り込ませた」という事実は、ありません。

 3、熊本県バドミントン協会による処分には疑問があること

 熊本県バドミントン協会が処分原因行為として指摘しているのは、平成27年12月の約150万円が同協会から今井の個人名義の銀行口座に振り込まれたことにかかわる点のみです。現在、同協会の今井に対する懲戒手続が実際に進行中ですので、詳細を公表することについては、どうかご理解願いたいと思います。

 もっとも、同協会が今井を処分することについては大いに疑問があります。

 まず、公平・公正・中立な処分ができないことです。今井の個人口座に振り込みしているのは、熊本県バドミントン協会です。同協会は、処分原因行為の一端を担っています。公平・公正・中立な立場は期待しがたいと言わざるを得ません。しかも、同協会は再春館製薬所からの資料のみをもって事実を認定し、いったんは永久追放処分の方針を固めています。このような同協会の対応からは、現実に公平・公正・中立な状態を失っていると評価せざるを得ません。

 次に、そもそも適正な手続が定められておらず、今井に十分な反論の機会が与えられていないことです。同協会は、弁明の機会すら与えずに処分しようとしていたことが、その手続の杜撰さを明らかにしています。現時点でも、今井はもちろん、処分原因事実に関わる関係者からのヒアリングなど、通常行われるのが当然の事実調査すらなされていません。それでいて、再春館製薬所が提出した関係資料の開示もなく、連休の谷間である5月1日付けで弁明通知書を送付し、5月15日までに弁明を書面で提出するように一方的に通知をしています(一部の報道にあるような「ヒアリング」すなわち、事情聴取や聴聞を同協会は予定しておりません)。そこに記載された処分原因事実が曖昧なので、今井はその内容を明らかにするよう求めましたが、何の対応もないままです。これでは、今井に十分な反論ができるはずもなく、弁明の機会を与えていないのと同じです。

 そして、同協会の倫理規定によれば、処分は、戒告、永久追放、社会への内容公開、捜査機関への通報等の4つで戒告以外は極めて重いものしか定められていないのに、処分基準も定められていません。処分原因行為に見合った処分ができるのか、極めて疑問と言うしかありません。

 以上のとおりですから、熊本県バドミントン協会には、今井を処分する適格がなく、適正な手続をとってもいません。適正な処分をするだけの環境も整っていないように思われます。当職において、これらの点を指摘し、同協会には手続の中止や、慎重かつ十分な事実調査、それらを経た上での弁明の機会の確保等適正な対処を求めていますが、これについても同協会は何の応答もしていません。

 4、今後の取材対応について

 まず、今井本人やご家族、岐阜トリッキーパンダースの選手・スタッフへの固別の取材は差し控えて下さいますよう、お願いいたします。

 また、これまで、いくつかの報道機関から個別に当職宛て連絡をいただきました。当職の事務所不在時に、「今日中に取材に応じなければ、相手方の言い分だけで報道する」というような伝言をされた方もいらっしゃいました。しかし、多くの報道機関に対して個別に対応することは困難ですし、多数の事件を担当している以上、まずはそれら事件の適正な解決を優先せざるを得ないのであって、報道機関の都合に合わせて柔軟に対応することも容易ではありません。同じ内容を繰り返し説明する負担も小さくありません。そこで、基本的には個別の対応は致しかねますので、お問い合わせ等は、幹事社を通じてお願いいたします。以上