日大は1日、アメリカンフットボール部の悪質な反則問題を受け、都内の日大本部で理事会を開き、内田正人前監督(62)の常務理事辞任を5月30日付で承認した。その後、大塚吉兵衛学長が第三者委員会の設置を文部科学省、スポーツ庁に報告したが、検証範囲のずれや、7月末とした結果報告時期の遅さを厳しく指摘された。大塚学長は同委員会の結果が出た時点で、田中英寿理事長が会見などの対応をするとの認識を示した。

 文科省を訪れた日大幹部は、内田氏が辞任に至った経緯を説明した。5月30日、辞任の意向を電話で聞いた大里裕行常務理事が内田氏が入院中の都内病院を訪れ直接、辞表を受け取った。関東学生連盟が内田氏の反則指示を認定したことには、刑事責任が伴う可能性もあり言及しなかった。

 内田氏は職員としては大学に残り、内規により6カ月の自宅待機となった。職員として人事部長、保健体育審議会の事務局長を務めているが、その職務は停止される。ただし、欠勤扱いとして一部給与は支給される見通し。井上奨前コーチも同様の措置になるという。

 「解任」としなかった理由を大里氏は、先月28日に警察から捜査要請があり、刑事事件の被疑者となっている中、事実解明がされていない時点で踏み込まなかったとした。刑事責任に問われなかった場合、第三者委員会の結果報告を受け、学内の人事給与委員会などで、処遇が諮られる。

 理事会で田中理事長は「今回の対応について、法人として後れを取った。迅速に対応すべきだった。おわび申し上げたい」と謝罪したという。ただ、現時点で自身は矢面には立っていない。「大学のガバナンス(統制)問題が指摘されている中、なぜ理事長が会見しないのか」と繰り返し問われても、大塚学長は「運動部を担当するのは保健体育審議会でその会長が私だ。私の管轄で全学には及んでいない」と繰り返した。

 しかし、大学の設置認可を所管する文科省やスポーツ庁は、学校法人としてのガバナンス体制の改善を指示しており、大塚学長の認識は大きくずれている。そのため、当初30分予定だった面会時間は1時間35分にまで延びた。文科省の担当者も「話が行ったり来たりだった。きちっとやっていただきたい。一般論として、一部活動のことで法人にまで問題が広がることはあまりないが、今回は平時ではない」と、あきれた様子だった。

 第三者委員会の結果報告まで2カ月もかかることに日大側はアメフト部員が150人、大学内、関学大、審判ら多くに聞き取り調査する必要があるとし「遅いと認識しているが、しっかりと検証したいため」と語った。スポーツ庁側は「短縮できれば日大アメフト部が秋のリーグ戦に間に合う可能性がある。学生のために頑張ってほしい」と1カ月以内を要求したが、期限は変わらなかった。

 第三者委員会を設置したのは学校法人日本大学で、大塚学長は「委員会の報告後は理事長が対応する」と明言。そうなると法人トップの対応は2カ月も先になる。【三須一紀】

 ◆日大が設置した第三者委員会メンバーは次の通り。

 ▼委員長 勝丸充啓弁護士(元広島高検検事長)

 ▼委員長代理 辰野守彦弁護士

 ▼委員 本田守弘弁護士、山口幹生弁護士、斎藤健一郎弁護士、和田恵弁護士、磯貝健太郎弁護士