3年間負けなしの世界王者も人間だった-。柔道男子66キロ級世界王者の阿部一二三(20=日体大)が29日、グランプリ(GP)ザグレブ大会を終えて成田空港に帰国した。

 同大会では準々決勝でアルタンスフ・ドフトン(モンゴル)に一本負け。国際大会では15年7月以来3年ぶりの黒星を喫し、連勝も34でストップした。

 開口一番、阿部は「1番は悔しい。今でも悔しい」と言葉を並べたが、表情は妙にスッキリしていた。20年東京五輪まで“無敗”を目指し、世界王者、世界ランキング1位、連勝記録など「勝って当然」の重圧から解き放たれた様子で、潔く、今回の負けを認めた。

 「負けは嫌だけど、さすがに無理だった。負ける時は負ける。これが世界選手権ではなくて本当に良かった。自分にとって、この負けを今後どう生かすかが重要」と、俯瞰(ふかん)して自身を見つめていた。

 世界選手権(9月、アゼルバイジャン)では、2連覇の自信を除かせた。「負けから得ることの方が多い。世界選手権までの2カ月で、まだまだ強くなれるし、最高のパフォーマンスが出来ると思っている。この負けをプラスに変えて、圧倒的な力で優勝したい」とさらなる進化を誓った。

 今大会の男子60キロ級を制し、阿部と同じく世界選手権で2連覇を狙う高藤直寿(25=パーク24)も「これが柔道。阿部くんも人間でしたね」と、自身にも言い聞かせるように勝負の怖さを再認識していた。