ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(23=ANA)が試合直前の右足首の負傷をものともせず、フリーで167・89点を出し、合計278・42点で優勝した。

日本人最多のGP10勝目をあげ、5度目の優勝が懸かるGPファイナル(12月、カナダ・バンクーバー)出場を決めた。

試合開始の約5時間前、練習中の羽生に思わぬアクシデントが起こった。8時20分の練習開始から約20分。フリーの曲がかかり、冒頭の4回転ループで体勢を崩した。着氷する右足首を折り曲げながら、転倒。体を氷上に伏して数秒動けなかった。再び立ち上がり、ゆっくりとリンクを回ったが、右足を気にする様子で曲が終わらぬうちに練習を切り上げた。

その20分後。会場から出てきた羽生は右足首の患部にアイシングを施していた。「大丈夫ですか?」という報道陣の呼びかけには「大丈夫です」。右足をやや引きずりながらも出場への意志を見せた。宿舎に戻ると患部を冷やして治療するとともに、オーサーコーチらと右足に負担をかけない演技構成プランを練り直し、試合に備えた。

昨年11月のNHK杯の悪夢がよみがえった。SP前日の公式練習で4回転ルッツを跳び、転倒。右足首があらぬ方向に曲がった。翌日になっても患部の痛みは消えず、のドクターストップで、涙を流して棄権した。GPファイナルどころか、翌2月の平昌五輪まで痛みが長引く重症だった。

痛みにこらえた五輪と同様、どうしてもロシアの地で最後まで滑りたかった。今季のフリーは、敬愛するロシアの“皇帝”ことエフゲニー・プルシェンコ氏の代表作「ニジンスキーに捧ぐ」の曲を使う「Origin」。ソルトレークシティー五輪での4回転ジャンプの激戦を制したプルシェンコ氏の姿が「五輪で金メダルを取りたい」と夢を描くきっかけだった。16日のSP後には「フリーはプルシェンコさんに向けて頑張りたい」と演技を彼にささげると宣言していた。

今回のけがの診断は現段階で不明。2季ぶりのGPファイナル、その後の全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)出場は、足の状態次第となりそうだ。