女子52キロ級で世界女王の阿部詩(うた、18=兵庫・夙川学院高)が2連覇を飾った。延長戦にもつれ込んだ決勝は、過去3戦全敗と苦手にしていた角田(つのだ)夏実(26=了徳寺学園職)に反則勝ちで優勝。9月の世界選手権と今大会の連続優勝で規定により、来年の世界選手権(東京)代表第1号に内定。激戦の同級で1歩抜け出し、20年東京オリンピック(五輪)へ最高のスタートを切った。男子66キロ級の兄一二三(21=日体大)は決勝で敗れ、世界選手権に続くきょうだい(兄妹)優勝はならなかった。
阿部が自分を律し、つかんだ頂点だった。延長に入り、57秒で決着した角田との決勝。両者に指導が与えられ、角田3回、阿部2回。反則勝ちの瞬間、さりげなく右拳を握った。技を積極的に繰り出しながら、いつもの「イケイケさ」に緩急をつけた。「攻めるところは攻める、守るところは守る。考えることも大切だと思いました」。世界女王として勝負にこだわった。
今夏のジャカルタ・アジア大会優勝の角田に過去3戦全敗。4月の全日本選抜体重別選手権準決勝では、ともえ投げで一本負けを喫した。一時、世界選手権代表へ後退する苦い思い出で「また負けたら、話にならない」。自然と考えは変わっていった。
そこからは暇があれば動画サイト「YOUTUBE」を開いた。「自分の負けた試合は見るのが嫌いだったけれど…」。夙川学院高の松本純一郎監督が「18歳の女の子らしさを見た。人の子で良かった」と振り返る1敗。同監督は「でも、バカじゃないから、同じことはやらない」と続けた。
女子日本代表の増地克之監督も「大人の柔道になった。世界選手権で優勝して、競った場面で(決勝の)ああいう戦いもある。地力がついた」。初戦は開始10秒で一本勝ち。準決勝は世界選手権決勝で倒した志々目を23秒の内股透かしで完勝し、阿部は「自分で言うのもなんですが、『強くなったな』と思います」といたずらっぽく笑った。
17年から世界選手権優勝者がGS東京大会(今年は大阪大会)を制すれば、翌年の同選手権に内定する規定を採用。前年の該当者は男子のみで、女子1号の快挙は激戦の52キロ級で1歩抜け出したことを意味する。20年東京五輪の選考基準は未定だが、プレシーズン最大の舞台へ、余裕をもって調整できることになった。
「時間はあるので試合にもしっかり出ながら、うまく調整したい。新しい自分を見つけたい」
来春からは日体大スポーツ文化学部へ進み、3学年上の兄一二三と同じ大学で高め合う。大学2年で迎える東京五輪の面影が、また少し近づいた。【松本航】


