フィギュアスケートの世界選手権(来年3月、さいたま)の代表選考を兼ねた全日本選手権が今日21日、大阪・東和薬品ラクタブドームで開幕する。今季現役復帰し、5大会ぶり出場の男子・高橋大輔(32=関大KFSC)。「世界一」と称されるステップの訳を国際スケート連盟(ISU)テクニカルスペシャリストの山井真美子さん(38)に聞いた。【取材・構成=松本航】

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4回転ジャンプなしで予選会を勝ち抜いた高橋は、唯一無二の滑りで4シーズンのブランクを埋めてきた。復帰後の姿勢をISUテクニカルスペシャリストの山井さんは「『もういいや』がなく、泥臭く練習できる」とたたえる。ステップなど各要素のレベルを判定する専門家の目線から、定期的に助言を送ってきた。

グランプリ(GP)シリーズ第6戦フランス杯など国際大会で審査する山井さんは、高橋のステップについて<1>難しいステップを踏みながら体の動きを使える<2>音をとれる<3>エッジ(刃)がディープ、と3つの良さを挙げる。「体の動き」とは体幹のバランスに影響が出るところまで、頭から両脚までの各部位をはっきりと使うことを意味し、レベル判定に影響する。多くの選手は「腕から先はすごく動くけれど、エッジにばかり気を取られる」が、高橋は全身を動かしきる。音を捉える天性の才能に加え、ステップ練習時によく転ぶほど「極限まで深くエッジを倒せる。それを誰よりも意識している」ことで、人を魅了する作品になる。

05年NHK杯ショートプログラム(SP)のステップは、最高のレベル4を世界で初めて獲得。それでも今夏の復帰当初、思うように体が動かない様子だったという。長光コーチは「トップ選手なのに、地道に基礎のスケーティングをやっていた」と土台から見直し、西日本選手権フリーでレベル4を獲得。高橋自ら「昔よりステップはうまくなった」と評す武器は熟成し、味の深みを増している。