卓球女子の石川佳純(26=全農)が東京五輪シングルス代表入りに一歩前進した。

9日、ワールドツアーの北米オープン(OP)決勝で平野美宇(19)を4-2で破り優勝。直接対決を制した石川が、世界ランキングで平野を逆転し、日本人2位に浮上した。シングルス代表は来年1月発表の世界ランキングの日本人上位2人。トップの伊藤美誠(19)は選出が確実。残り1枠のし烈な戦いは、12日開幕のワールドツアー最終戦、グランドファイナル(12日開幕、中国・鄭州)で決着する。

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石川は優勝を決め、タオルに顔をうずめ感極まる。世界ランキングポイントで平野を65点差で追い、臨んだ今大会。この勝利で逆に、135点上回った。わずかなリードでも涙がこみ上げるのは、五輪選考レースがし烈さを極めているからだった。

ともに優勝が「ノルマ」。優勝しなければ五輪選考基準となる、各選手上位8大会の世界ランキングポイントに加算できない状況だった。厳しい戦いの中、両者は決勝に勝ち上がった。

石川のゲームカウント3-2で迎えた第6ゲーム。いったんマッチポイントを握るも、10-10に追いつかれる。それでも一瞬ほほ笑んで、うなずいた。シーズン中盤は同様の展開で、険しい表情が前面に出ることが目立ったが、この日は違った。代表争いも残り2大会。「前向きな気持ちで攻めきろう」と、吹っ切れていた。

相手サーブ。強烈なバックハンドレシーブで平野のボディーを狙う。返球を今度は相手フォア側に軌道を変える。そのスピードに、わずかに対応しきれなかった平野のフォアがアウトになり、11-10。最後も平野の体目がけてバックを強打し、相手がネットに引っ掛け、決着した。宣言通り強気で攻めた結果の優勝だった。

今大会は通常のワールドツアーより、ランクの低い「チャレンジ」という枠組み。石川はシーズン終盤になるまで「出場は想定していなかった」と話すほど、五輪選考レースは大混戦となっていた。

今大会優勝で平野を逆転したが、差はわずか。一進一退の争いは12日から開幕する最終戦グランドファイナルまでもつれ込んだ。原則的に、平野、石川を含む年間ワールドツアーの上位16人が出る大会。出場だけで1020点が入り、8強1275点、4強1660点、2位2040点、優勝2550点と上位進出ごとに獲得ポイントが増加していく。1勝でも多い方がシングルス代表権を得る世界ランキング日本人2位を確定させる。同じラウンドで敗退すれば、今大会でポイントを逆転した石川の代表権が確実になる。石川にとって北米OPの優勝は大きな価値があった。

◆卓球日本代表の五輪選考方法 男女ともに20年1月発表の世界ランキング上位2人がシングルス代表権を獲得する。団体戦要員の3人目は日本卓球協会の強化本部が推薦する。来年1月6日に男女それぞれ3人の東京五輪代表が発表される。