ボリビア人の母を持つ兄弟が2人で夢舞台へ。テコンドーの東京五輪の最終選考会が9日、岐阜・羽島市内で行われ、男子58キロ級では鈴木セルヒオ(27=東京書籍)、男子68キロ級では鈴木リカルド(19=大東大)がともに優勝した。

先に兄が手本を示した。8-7の決勝残り1秒。東島の蹴りをかわし、東京五輪を告げる試合終了のブザーが鳴った。セルヒオは「夢なんじゃないかというぐらいうれしい」。次の試合は弟。すれ違いざまに「待ってるぞ」と告げ、応援席に座った。その言葉にリカルドも闘志がたぎった。女子57キロ級代表になった浜田真由の兄康弘を6-5で退けた。「兄弟で勝ち取れたのはうれしい」と喜んだ。

父健二さん(53)は南米をバイクで旅行中にボリビア人のノルマさん(52)と知り合い、そのまま結婚した。セルヒオは川崎市で生まれ、5歳の時、健二さんが日本料理屋をボリビアで開くことになり、一緒に海を渡った。そこでテコンドーにも出会った。10歳の時には「五輪に出る」と宣言。高校は本場・韓国に単身留学し、力を付けた。ボリビアで生まれたリカルドは高校卒業後から日本へ。ボリビア代表になる選択肢もあったが、遠征費の補助など環境が整う日本で勝負する道を選んだ。現在は2人で一緒に暮らし、練習も一緒。ともに高め合う。

2人は東京五輪の目標を「金メダル」と口をそろえる。セルヒオは「血へどを吐くぐらい努力し、レベルアップしたい」。そして兄の顔で「弟は僕より才能がすごくある。でも背中を押さないと、ケツをたたかないとやらない子。俺に付いてこい」。それを聞いたリカルドは「兄のおかげで強くなった。感謝しかない」と語った。【上田悠太】