日本スケート連盟(JSF)は28日、フィギュアスケート男子で冬季オリンピック(五輪)2連覇の羽生結弦(25=ANA)が今季グランプリ(GP)シリーズを欠場すると発表した。新型コロナウイルス感染症のリスクを回避するため、3連覇がかかる22年北京五輪プレシーズンのGPシリーズに出場しないという一大決心をした。

以下、本人のコメント全文。

「新型コロナウイルスと気管支喘息(ぜんそく)の関係性については、まだ確証となるものはなく、情報も十分ではないので判断が難しいところですが、呼吸器系基礎疾患を有する者が新型コロナウイルスに罹患(りかん)した場合、重症化し易(やす)いとの情報もあるので、可能な限り慎重に行動したいと考えています。また、気管支喘息に関係なく、一部の選手が新型コロナウイルスに罹患した後、後遺症によって選手活動が困難になってしまっている点からも、慎重に行動を検討する必要性があると思っております」

「現段階で、カナダ在住のオーサーコーチが日本での試合に帯同するために来日することが困難であることが予想されます。一方、私が日本からカナダの試合に出場する場合は、カナダ入国後2週間の自己隔離が必要となります。その期間、練習など一切のスケートの活動ができないため、選手にとって万全の状態で試合に臨むことができません」

「このコロナ禍の中、私が動くことによって、多くの人が移動し集まる可能性があり、その結果として感染リスクが高まる可能性もあります。世界での感染者数の増加ペースが衰えておらず、その感染拡大のきっかけになってはいけないと考え、私が自粛し、感染拡大の予防に努めるとなれば、感染拡大防止の活動の一つになりえると考えております」

「大変残念ではありますが、以上の理由から、今シーズンのISUグランプリシリーズを欠場することを決心いたしました」

「一日も早く新型コロナウイルスが収束することを願っております」(原文まま)

国際スケート連盟(ISU)は今月4日、今季のGPシリーズは「1人1大会」などの制限付きで開催する方針を発表。10月に開幕する全6大会の出場者が開催国の選手、その国に練習拠点を置く選手らに限ると決めていた。

この条件下、羽生が第2戦スケートカナダ(10月30~11月1日、オタワ)か第6戦NHK杯(11月27~29日、大阪)のどちらを選ぶか注目されていたが、新型コロナへの懸念がぬぐえないこと、どちらの道も万全の準備ができないこと、さらには、自らが行動を自粛することによって感染拡大を防止したいという発想から、五輪プレシーズンの貴重な国際大会を自ら辞すという異例の決断を下した。【木下淳】

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◆コロナ禍での羽生 3月の世界選手権が中止。その後、5月には日本スケート連盟の公式ツイッターを通じて3本の動画を公開。自身も被災した11年3月11日の東日本大震災から滑ってきたプログラムのうち17曲を選び、屋内で舞う姿を311秒かけて披露。コロナ禍の終息への祈りと願いを込めた。7月には国際スケート連盟(ISU)がフィギュア部門で創設した「ISUスケーティング・アワード」の表彰式で初代「最優秀選手賞」に輝いた。アイスショーも軒並み中止となる中、7月末には早大人間科学部(通信教育課程)の卒業論文を完成させた。

◆GPシリーズ 95-96年シーズンに「チャンピオンシリーズ」の名で始まった。98-99年シーズンに「グランプリシリーズ」に改称。ロシア、カナダ、中国、日本、フランス、米国などで開催されてきた。例年10月から11月にかけて6週連続で6大会が行われ、順位に応じたポイントの合計で、上位6人(組)が、12月に開催するGPファイナルに出場できる。コロナ禍の今季は「1人1大会」「出場者は開催国の選手、その国(近隣国)で練習する選手」となっていた。

◆気管支ぜんそく 空気の通り道である気道が炎症を起こし、狭くなる病気。のどから「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と音がしたり、呼吸が苦しくなる。息切れ、せきなどの発作を繰り返す。工場、たばこの煙、ほこり、ストレスなどの刺激が引き金となることが多い。重症のぜんそく発作は生命にかかわることもある。国内の患者数は約450万人。子どもの6%、成人の3%が気管支ぜんそくといわれている。

 

 

<2020-21年シーズンGPシリーズ>

▼第1戦スケートアメリカ(10月23~25日、ラスベガス)

▼第2戦スケートカナダ(10月30日~11月1日、オタワ)

▼第3戦中国杯(11月6~8日、重慶)

▼第4戦フランス杯(11月13~15日、グルノーブル)

▼第5戦ロシア杯(11月20~22日、モスクワ)

▼第6戦NHK杯(11月27~29日、大阪・東和薬品RACTABドーム)

▼GPファイナル(12月10~13日、北京)