ラグビートップリーグ・ヤマハ発動機は9日、元日本代表FB五郎丸歩(34)が今季限りで現役を引退することを発表した。

五郎丸は16日に浜松市内で記者会見を開き、来年1月16日開幕のラストシーズンに向けての思いを語るという。正確なキックを武器に活躍し、日本代表では57キャップ。2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会では、キックの際に両手を体の前で合わせる「五郎丸ポーズ」で話題となり、一躍時の人になった。

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人気と実力を兼ね備えたスター選手が、ついに現役を退く決断をした。五郎丸はこの日、自身の公式ブログを更新。ヤマハ発動機のユニホーム姿の写真を添えて「本日リリースされた通り、今シーズンを最後に引退を決意しました。ラストシーズン自分らしく!!」と記した。

関係者によると、新型コロナウイルスの影響が長引き、予定通りトップリーグの今季全日程が開催されるか不透明な状況を踏まえ、五郎丸は開幕前に引退の意向を明らかにしたという。「まだまだ一線でプレーできると思うが、本人の決断。強い意志を感じた」と話す。今年1月開幕の昨季は、予定の15試合を消化できず、6試合で中断された。

今季に向けた準備は順調だった。コロナ禍の自粛期間中に体づくりに励み、理想の体重100キロをキープ。過去2回脱臼した右肩についても「完治している」と、万全ぶりをアピールしていた。今月3日まで約2週間、チームの宮崎・延岡合宿に参加。走り込み中心のフィジカルトレに耐え、自身のツイッターにはチームメートと笑顔を見せる写真を掲載していた。

15年W杯では初戦の南アフリカ戦で1トライを含む24得点をマークし、歴史的勝利の立役者となった。「五郎丸ポーズ」はブームとなり、新語・流行語大賞の候補になった。同W杯後は海外に進出。スーパーラグビーのレッズ(オーストラリア)やフランス1部リーグの強豪トゥーロンでプレーした。

抜群の知名度を生かし、テレビ番組やCMに多数出演。昨年のW杯日本大会では、NHKで解説を務めた。ラグビーの発信役を自任し、他競技や他分野とのコラボレーションにも尽力。ラグビーに関心のない人々へのアピールを続けてきた。引退後の進路は未定だが「スポーツ界に携わっていくのでは」と関係者は話した。

今後は4度の強化試合を経て、来年1月16日、今季開幕の神戸製鋼戦に臨む。トップリーグでの自身最高成績は、14~15年の準優勝。チームを初優勝に導くという仕事が、引退前の五郎丸には残っている。

◆五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)1986年(昭61)3月1日、福岡市生まれ。3歳でラグビーを始め、小学4~6年はサッカーでも活躍。佐賀工高では3年連続の花園出場、早大では大学選手権を3度制した。ヤマハ発動機では現在、プロ契約だが、社員時代には広報宣伝部に所属。185センチ、100キロ。家族は妻と2男。血液型B。趣味は釣りで、船舶免許を持つ。好物はイワシ料理。

<五郎丸の記録アラカルト>

◆テストマッチ通算711得点 05年4月のウルグアイ戦で代表デビューし、57試合に出場。日本代表歴代最多得点を誇る。

◆W杯1試合24得点 15年W杯の南アフリカ戦で、日本歴代最多の24得点をマーク。歴史的勝利に貢献した。

◆W杯1大会通算58得点 15年W杯1次リーグの全4戦で1トライ、7ゴール、13PGを決めた。日本新記録で日本代表の総得点98のうち、約6割を右足で稼いだ。大会ベストフィフティーンにも選出された。

◆TL通算1254得点 08年9月の近鉄戦での初得点から主にゴールとPGで得点を重ねた。歴代1位記録で得点王にも3度輝いた。

◆TL1試合最多8PG 10年9月のNEC戦で記録。歴代1位タイ。

◆TL1試合最多11G 今年2月のNTTドコモ戦でリーグタイ記録を樹立。