初出場でリズムダンス(RD)2位の村元哉中(かな=27)、高橋大輔(34=ともに関大KFSC)組が2位に入った。FD3位の84・03点にとどまり、合計151・86点。前日26日のRD前に村元が左膝を負傷する不運もあったが、高橋はFDでミスがあり、22年北京五輪シーズンの来季へ「悔しさをぶつける」と闘争心を燃やした。RD1位の小松原美里(28)、小松原尊(29=ともに倉敷FSC)組が、合計175・23点で3連覇を果たした。

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男子シングルで5度、頂点に立った。通算15度目、アイスダンサーとして初出場の大会を終えて、高橋の胸に懐かしい悔しさが残った。カップルを組む村元は「課題は本当に全部。どっちか(が悪い)とかじゃない」と口にした。隣の高橋は素直な思いを明かした。

「こういう気持ちになったのは久しぶり。2014年までの気持ちを、今回で思い出しました」

6年前、14年ソチ五輪後に現役引退した。18年の復帰後は自分のために滑っていた。だが、今は同じ夢を追う村元がいる。競技者として高みを目指す情熱を、悔しい演技で思い出した。

「天国で会おう」-

演技直前、村元から英語でそうささやかれた。FDは古代インドが舞台のバレエ「ラ・バヤデール」。戦士ソロルと舞姫ニキヤの恋物語を頭に浮かべた村元の言葉に、高橋の緊張感は解けた。だが、その場で回転する「ステーショナリー・リフト」で村元を持ち上げた後にバランスを崩し、多回転の片足ターン「ツイズル」も乱れた。前日に村元が左膝を痛め、この日午前の公式練習は振り付け確認に終始。7学年下のパートナーに「大ちゃんが100%サポートして守ってくれた。とりあえず感謝しています」とねぎらわれたが、心の底から喜べなかった。

「RDでは『絶対にサポートするぞ』という気持ちだったけれど、フリー(FD)で僕が逆に失敗してしまって、悔しさがあった」

1年前はシングル選手として、最後の演技を行った。年明けにアイスダンスへ転向。新型コロナウイルスの影響も受けながら、米フロリダで基礎からたたきこんだ。「実際にやることがたくさんありすぎて、気持ち的には3年ぐらいかけて、ここに戻ってきた」。前夜には米国にいるズエワ・コーチから、村元へ「素晴らしい着地点に行くには、真っすぐな道はない。ぐねぐねな道を通り、ゴールにたどり着く」と電話があった。これも成長の過程だ。

1年後の全日本選手権は、目標とする22年北京五輪の代表選考会になる。今の感情を、高橋は忘れない。

「次のシーズンに悔しさをぶつけたい。本当に簡単な道ではない。行けると信じて、練習するしかない」

曲がり道の先で、必ずや視界は開ける。【松本航】

◆アイスダンスの北京五輪への道 新型コロナウイルスにより大会の中止、延期が相次いでいる。日本は1枠を持つ3月の世界選手権(スウェーデン)で、北京五輪の国・地域別出場枠を懸けることになるが、現状は不透明な状況が続きそう。枠が確定すれば、来年末の全日本選手権が最終選考会となる見込み。出場24組だった18年平昌五輪では、前年の世界選手権で19枠がかかり、逃した国・地域は残り枠を争う9月の予選に回った。日本は村元、リード組が予選で1枠を獲得し、17年末の全日本で優勝して本大会に出場した。