第40回大阪国際女子マラソンは31日、大会史上初の長居公園周回コース(1周約2・8キロ)で行われる。従来は公道を使用したが、新型コロナウイルスの影響で園内を14周と5分の4走り、ヤンマースタジアム長居(ヤンマーS)が終着点。記録は公認され、競技場や沿道で応援はできない。東京五輪代表の前田穂南(24=天満屋)、一山麻緒(23=ワコール)にとっては五輪の試金石だ。異例のコースを185センチ、102キロの元ラガーマン、松本航記者(29)がリポートする。

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デスクの“むちゃぶり”は突然だった。「周回コースってどんなんや? 走ってきて~」。元ラグビー部で大体大出身。斜面でスクラムを組み、片道100メートルのランパス10往復も駆け抜けた。だが、社会人も8年目。10%台前半だった体脂肪率は倍になり、身につけたのは要領。デスクに内緒で自転車を借りた。右手にヤンマーS。スタート地点で「走ってきます!」と元気だけは見せつけた。

1周は約2・8キロ。スタート地点からはJリーグC大阪の本拠で改修中のヨドコウ桜スタジアムが見える。「当日はサッカー元日本代表、森島寛晃社長が念を送ってくれるかな?」なんて、ふと考えた。周回コースは15周で42・195キロだが、当日のゴールはヤンマーSだ。そのためコースを5分の1、反時計回りに進んだ位置が出発点。“試走”をして、感じたポイントは4つあった。

(1)景色 従来は大阪城公園や御堂筋など市内の名所を巡るが、周回コースは単調。素人目線では自分との戦いに心が折れそう。周回遅れの選手が出れば、普段のマラソンと勝手が違う。

(2)高低差 周回コースは約5メートル。札幌開催の東京五輪は同43・6メートルといい、比較しても極端に平らだ。市民ランナーによると「トラックの延長でリズムを刻みやすい」「風を遮る箇所も多い。日本記録も期待できるのでは?」。野口みずきが持つ「日本記録」(2時間19分12秒)という言葉まで飛び出した。

(3)無観客 大阪らしい元気な声援が当日はなし。公園の案内板に表示されている長居植物園のキャラクター「しょくぽん」が選手にとって唯一の癒やしかも。

(4)勝負の30キロ 11周目の最終コーナー「北東入り口」を過ぎたところが30キロ地点。昨年までは大阪城公園を抜け、玉造筋を南下するJR森ノ宮駅付近にあった。1年前は松田瑞生(ダイハツ)が通過後に仕掛け、トップでゴール。一山が五輪代表権をつかんだ昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンで、集団から抜け出しにかかったのも30キロ付近だ。ペースメーカーの川内優輝(33=あいおいニッセイ同和損保)に率いられた2人が、緩やかな直線で視界に入るヤンマーSの屋根を合図に、仕掛けるかも…。

東京五輪における30キロ地点は北海道大学内。景色こそ違うが、五輪前最後のレースとみられる2人にとって、終盤は勝負どころになる。歩くと35分かかる周回コースは、新たな歴史を生みだしそうだ。【松本航】