本多灯(19)が世界レベルのレースを制して、初の五輪出場を決めた。本多はラスト50メートルでトップを泳ぐ瀬戸大也(26)を逆転。派遣標準記録を上回る1分54秒88で初優勝した。2位の瀬戸も1分55秒20で代表を決めた。元五輪代表の高橋繁浩氏はレベルの高いレースを振り返り、この種目で過去4大会連続メダル獲得中の日本の強さにも言及した。

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優勝タイムこそ速くはなかったが、男子200メートルバタフライは見応えある世界レベルのレースだった。瀬戸が照準を合わせるのは金メダルを狙う五輪本番。今はその過程で、この日の順位もタイムも心配はない。目標は五輪出場ではなく、メダル獲得だから。本番ではきっちり調整し、合わせてくるのは間違いない。

優勝した本多も勢いを感じる。もともとラスト50メートルに強い後半型。前半の入りを速くして、後半の強さを維持すれば、1分53秒台前半が見えてくる。ミラーク(ハンガリー)が1人抜けているが、世界の2位以下は大混戦。瀬戸と2人で表彰台に立つことも、決して不可能ではない。

実は、この種目は日本の「お家芸」でもある。過去4大会連続でメダル獲得。平泳ぎも3大会が最高で、4大会は他にはない唯一の記録だ。04年アテネ大会は山本貴司が優勝したフェルプス(米国)に迫り銀、08年北京、12年ロンドン大会は松田丈志が連続銅メダルで、前回16年リオ大会は坂井聖人が絶対王者のフェルプスに0・04秒差と肉薄する銀メダルを獲得した。日本勢が常に金メダルを争うレースをしてきたわけだ。

バタフライは、疲れた時の失速が著しい。パワーで押し切れる100メートルではメダル獲得がない日本も、消耗を抑えるテクニックも重要になる200メートルなら戦える。体格や筋力で欧米に劣っても、日本には抵抗を最小限に効率よく水に乗る技術がある。他種目に比べて苦しい練習に耐えられることも日本の強みだ。

本多が瀬戸を目標にしたように、身近に「世界」があることも底上げの要素。世界で勝てる選手のトレーニング法はコーチ間で共有され、続く選手のために使われる。最近の個人メドレー、男子平泳ぎや、以前の女子背泳ぎなど層が厚くなるのはそのためだ。世界レベルの瀬戸を追いかけて19歳の本多が出てきた。日本の「新お家芸」は、東京五輪でも続きそうだ。(84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪平泳ぎ代表)