ニッカンスポーツ・コムでは8日、18日、28日の「8」がつく日に、NBAウィザーズの八村塁(23)に関するコラムや話題を連載している。第4回は、なかなか再び交わらない渡辺雄太(26)との足跡を振り返る。

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日本バスケ史に残る1分9秒が刻まれたあと、時計の針は進みそうでいて、なぜか進んでいない。

2人の足跡が最高峰の舞台で初めて交差したのは19年12月14日(日本時間15日)のことだった。渡辺が当時所属していたグリズリーズの本拠地フェデックス・フォーラム(米テネシー州メンフィス)。第2クオーター(Q)途中で渡辺が投入されると、その約2分半後の残り7分42秒、先発出場からいったんベンチに下がっていたルーキー八村が再びコートに戻り、NBA史上初の日本人同時出場が実現したのだ。

ほどなくして渡辺はベンチへ。最終Qで渡辺が再起用されたときには八村がベンチに退いていたため、2人の共演時間は1分9秒にとどまった。それでもシュート体勢に入った八村に対し、渡辺が厳しくチェックするシーンも見られた。短い時間をファンは夢心地で楽しみ、両選手は試合後、うれしそうにユニホームを交換しあった。

このシーズン2度目のウィザーズとグリズリーズとの対決は20年2月10日。ウィザーズの本拠地キャピタルワン・アリーナでの一戦で、八村は先発で約25分出場してダブルダブルをマークする活躍。一方の渡辺は途中出場で10分間プレーした。とはいえ、この日は2人が同時にコートに立つ時間帯はなかった。次のシーズンでの“再共演”を、ファンは心待ちにした。

ラプターズに移った渡辺の出場機会が飛躍的に増えた今季は、2人が直接対決する場面はさらに増えると思われていた。

しかし“前回”からちょうど1年後に行われた今年2月10日のウィザーズ対ラプターズ戦で、好調をキープしていた渡辺が左足首捻挫により緊急欠場。試合後には「今日の試合を楽しみにしてくれてた方々ほんっっっっっとすいません」と両手を合わせる絵文字をつけて投稿した。

やきもきするようなストーリーはさらに続く。4月5日の対戦では、今度は八村が右肩の張りで欠場。渡辺が本契約を結び、三度目の正直が期待された5月6日には、八村が体調不良、渡辺は右足首痛を訴え、両者とも登録メンバーから外れる事態に。3日前の試合後に八村は、「楽しみ。今年まだ1度もやっていない」と、共演を待ち切れない様子だったが、結局、今季のレギュラーシーズンでの対戦はすべて流れた。

一昔前の恋愛ドラマのようなすれ違いを続けた今季の2人。見守る側にとっては、待たされる時間が長いほど期待はどんどん高まる。1年間で大きく成長を遂げた両者がようやくコート上で再会する時、「1分9秒」で止まっていた時計の針は、一気に動くはずだ。【奥岡幹浩】