4大大会4度の優勝を誇る世界41位の大坂なおみ(24=フリー)が、5月の全仏1回戦敗退以来、約2カ月ぶりの復帰戦を勝利で飾った。この1年で、世界ランクを100位以上も上げた新星で、同51位の鄭欽文(19=中国)に6-4、3-6、6-1のフルセットで勝ち、2回戦では、同11位のガウフ(米国)と対戦する。対戦成績は大坂の2勝1敗。

タフな試合だった。勝利後、控えめな大坂としては珍しく、何度も両手でガッツポーズをつくった。「戻ってこられて本当にうれしい。これも父のおかげ」と、今大会から暫定でコーチとなった父レオナルド・フランソワさんに感謝した。

相手は、大坂同様に一発がある若手だ。サーブとストロークの破壊力は、大坂に引けを取らない。大坂は、焦ったり、守りに回ったりしてもおかしくなかったが、第2セットを失っても、「とにかく全力を出そうと考えていた」と冷静だった。

第1セットの第2ゲームに、早々と勝敗のカギが訪れた。1ゲーム目を1点も取れず、相手にサービスキープを許した。続く自身のサーブで2度のブレークポイントを握られた。落とせば、一気に相手に流れは行ってしまうところだ。しかし、落ち着いてキープすると3ゲームを連取し、逆に主導権を握った。

自分を励ます「カモーン!」の声は、最終セット、何度もこだました。ミスをして叫んだり、ラケットを投げることは皆無。逆に、何度も笑顔を見せ、「自分の出せるものは発揮できたと思う」と、質が高いレベルでプレーできたことに満足げだった。

この日、自身と姉まりさんがデザイン、プロデュースした新たなラケットで挑んだ。「OSAKA EZONE」と名付けられた新ラケットは、姉が「龍」と「彼岸花」をアレンジし、自身はカラーリングを担当した。「龍」は、母環(たまき)さんが、姉妹を、「幸運」、「強さ」、「縁起の良さ」から、「龍」にたとえたことによる。

今大会は、14年にツアー本戦デビューを果たした思い出の大会でもある。当時、世界406位。予選を勝ち上がり、1回戦で同19位のストーサー(オーストラリア)をフルセットで撃破し、鮮烈なデビューだった。そして、今大会から、世界の頂点に羽ばたいた。

ツアーの勝利は、全仏前哨戦のマドリードオープン1回戦以来、95日ぶりだ。痛めていた左アキレス腱(けん)も問題ない。得意のハードコート、そして世界に飛躍した原点の大会で、まさに「昇り龍」に変身した大坂が、29日開幕の全米(ニューヨーク)に向け、快進撃の予感だ。