「自分がやるべきことを体現する」。故郷沖縄を離れ、北国秋田でプレーするアランマーレ秋田・嘉数唯(23)は、そう誓った。筑波大から加入した今季は、ここまで全14試合に先発出場。ルーキーながら主力として活躍する一方で、コートでは高い壁に阻まれてきた。それでも、家族の支えや同期の存在に刺激を受けて奮起する23歳に「挑戦」の年となった22年から23年への思いを聞いた。チームは14、15日、秋田・由利本荘市で姫路と対戦する。【取材・構成=相沢孔志】
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取材は柔らかな雰囲気で始まった。好きな有名人を聞かれた嘉数は笑顔で答えた。
「1人ですか? (笑い)えぇ~。誰だろ…。女優の吉瀬美智子さん!」
昨年3月に大学を卒業した23歳は、バスケットの話題になると真剣な表情に変わった。アーリーエントリーで加入した昨季は2勝を経験。ルーキーイヤーの今季はさらにWリーグのレベルの高さを痛感している。
「大学生では通用していたことが全く通用しなかった。高さのある選手に対して、1対1でシュートを決めきれないことが多くありました。試合をする度に自分の力のなさをすごく痛感しました」
プレーするだけでなく、勝つことが大事な仕事。観客の応援を受け、手にする「1勝」の重みを感じている。
「ホームの試合は応援してくださる方がたくさんいてパワーをもらえます。大学は関東で上位のチームだったので、アランマーレに来て、1勝するうれしさはすごく感じます。勝つことの難しさ、勝った時のうれしさや喜びが得られます」
福岡大若葉への進学で沖縄を離れ、Wリーグを強く意識したのは筑波大進学後。身近な先輩らがステップアップし活躍する姿に憧れたが葛藤もあった。
「チームメートが代表選手で、後輩も代表に入った子たちばかり。試合に出るのもやっとの状況でした。4年間通して苦しい時間の方が多かったです。(卒業後は)関東の実業団で続けようと考えていましたが、4年生になってガラっと(変わり)、チャンスがあるならWリーグでプレーしたいという気持ちになり、アランマーレに決めました」
一緒に大学4年間を過ごし、同じ舞台に進んだチームメートには負けたくない。昨年は同期の出原菜月(山梨)、佐藤由佳(ENEOS)、樺島ほたる(東京羽田=いずれも23)と“敵”として対戦。中でも10月にオーバータイム(延長戦)で惜敗したホーム開幕山梨戦が印象に残る。
「悔しかったです。延長戦で出原に決められたことが敗戦につながったと思います。大学の時はずっとポジション争いをしてきたからこそ『自分ももっと頑張ろう!』と思いました。樺島も同じスタートで出ていて。敵ですけど…。一緒のコートに立ったら、うれしい気持ちがありました」
東北でひたむきに頑張る姿を楽しみにしている人がいる。父知哲さんだ。
「父からは、小さい頃からずっと『Wリーグの選手になれ!』と言われました。Wリーグの選手を目指そうと思ったのは、その影響もあります。父は大喜びでした。毎試合、このようにした方がいいというアドバイスなどの連絡が来ます。(プレーは)しっかり見ていますね。(指摘が)細かいです(笑い)」
バスケットに打ち込む家族の存在が力を与えてくれる。白鴎大(栃木)在学中の弟啓希(3年=豊見城)は昨年12月、全日本大学選手権で準優勝。姉として、活躍を喜んだ。
「決勝は見ました。弟が一番の大舞台で活躍していることはとてもうれしく思いますし、いい影響をもらっています」
迎えた23年。前半戦を折り返し、残りは12試合となった。色紙に23年の目標「体現」と書き、決意を新たにした。
「(ヘッドコーチの)小嶋(裕二三)さんに求められるプレーなどを体現してやり切る! という意味で書きました。スコアも自分の課題になっていて、練習中も小嶋さんに『いつまでも頼るな!』と言われました。コートに立ったら頼る場面は頼りますけど…。年齢や新人関係なく、チームメートから頼られる存在になりたいです!」
澄んだ瞳の奥には静かな闘志があった。
◆嘉数唯(かかず・ゆい)1999年(平11)4月12日生まれ、沖縄県那覇市出身。古蔵小2年からバスケットボールを始める。古蔵中-福岡大若葉-筑波大。22年4月にアランマーレ秋田加入。174センチ。ポジションはパワーフォワード。コートネームはユイ。家族は両親と兄、弟。尊敬する選手は富士通・内尾聡菜、シャンソン化粧品・佐藤由璃果。好物はラーメン、チーズ、生カキ。好きな有名人は吉瀬美智子。


