王子谷剛志(30=旭化成)が、歴代3位タイとなる4度目の優勝を遂げた。
山下泰裕の9度、小川直也の7度に次ぎ、現男子日本代表監督の鈴木桂治に並ぶ回数の日本一。場内インタビューで「最高でーす!」と喜んだ。
17年以来6大会ぶりは最長ブランクの返り咲きとなり「正直、もう自分は終わったと思っていた。(20年に結婚した)妻や夏に生まれてくる、わが子(第1子)をはじめ、職場や道場でサポートしてくれた方々のおかげで、また頂点に立てた。自分1人だけの優勝ではなかった」と過去との違いに、感極まった。
決勝では「憧れの先輩」を破った。16年リオデジャネイロ五輪(オリンピック)男子100キロ級銅メダリスト羽賀龍之介(32=旭化成)との、所属の同僚対決を反則勝ち(指導3)で制した。
神奈川・東海大相模高から東海大、旭化成と同じ道を歩んできた存在との「夢だった決勝。令和になってから羽賀先輩が決勝に進んでいたのに、自分がポカして戦えなかったので…」。
ようやく実現した頂上決戦。満喫した。ともに指導2を受けてゴールデンスコア(GS)の延長戦に突入しても、逆の一本背負いなどで圧をかけ続ける。迎えた4分56秒(計8分56秒)に、攻めて攻めて最後の指導を奪った。羽賀を「強烈だった。(担ぎ技で)あんなに自分の体が浮くとは思わなかった」と、うならせる「奇跡」(王子谷)の結末だった。
21年の東京五輪を逃し「引退も考えた」。しかし、衣織夫人に「格好いいところを見せたい。輝きを取り戻したい。新しい自分を見せたい」と再起。拠点も神奈川の東海大から、旭化成の道場がある宮崎・延岡へ移した。
「縁もゆかりもない場所に妻が付いてきてくれて感謝だし、延岡はトップ選手が多いので、稽古で1日に1回も投げられない日もある」
さらに、これまでの競技専念状態から一転、午前9時から午後3時まで総務や地域貢献の業務も始めた。環境は大きく変わったが「へこんだ自分を、みんなが引き上げてくれた。心機一転の出直し」が復活劇に結びついた。
前回22年大会で初優勝した斉藤立(21=国士舘大)と、準優勝の影浦心(27=日本中央競馬会)は、男子100キロ超級の世界選手権(5月、ドーハ)代表に選ばれているため出場していない。その中で躍進した90キロ級の田嶋剛希(25=パーク24)を準決勝で退け、決勝でも羽賀との同門かつ優勝経験者対決を制し、最重量級の面目躍如となった。
場内インタビューで報告した「夏に生まれてくる、わが子」は6月末に誕生予定。同月3、4日に行われる全日本実業団体対抗(三重)で主将として優勝に導く決意とともに「それが終わったら出産のサポートに集中したい」。聖地の拍手を浴び、過去3度と異なる喜びに感動した。日本一のパパになる準備を、愛する家族と整えた。【木下淳】


