期待の秋田っ子が、夢の舞台での経験を糧に大きく飛躍する。B1秋田ノーザンハピネッツの特別指定選手・小川瑛次郎(18=羽黒)は秋田市出身。小さいころからハピネッツを応援してきた根っからのブースターだ。1月29日に特別指定選手の契約に合意し、夢見てきた世界の一員となったが、大学進学のため2月29日で契約終了。出場は1試合にとどまったが、大きな、大きな1カ月だった。小川の秋田ノーザンハピネッツでの1カ月を振り返る。【取材・構成=濱本神威】

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ハピネッツを初めて見た印象は「すごいな、楽しそうだな」だった。だが、まさか自分が同じ舞台でプレーできるとは夢にも思っていなかった。その舞台は中学3年生で夢から目標に変わった。「中学校でハピネッツのU-15に入ったときに、1回だけトップチームの練習に参加させてもらった。その時に『8年後、10年後に自分もここでバスケットボールがしたい』と思いました。その時に初めて夢から目標になった」。

昨年、ハピネッツから声がかかった。「まさかこんなに早くこういう機会をもらえるとは思っていなかったのですごくうれしい」。同時に「ちょっとまだプロは早いのかなって思ったりもした」という不安もあったが、家族や顧問の先生などの周囲の後押しと「夢だったハピネッツでプレーしたい」という思いがあり、目標となってから3年、Bリーグに足を踏み入れた。

デビュー戦は契約発表から2日後。1月31日のホーム茨城戦だった。第1クオーター(Q)残り43・9秒でコートイン。夢の舞台に立った。残り7秒、プロ1本目の3点シュート(3P)はリングに嫌われたが、9-22で迎えた第2Q残り8分12秒、2本目の3Pはきれいな放物線を描いてリングに吸い込まれた。小川のBリーグ初得点にクレイジーピンクが波打ち、チームは流れを奪取。第1Qに20失点も、以降を30失点に抑える堅守を見せ、64-50で勝利し、連敗を脱した。

地元で鮮烈デビューを飾ったが、前田顕蔵HC(41)は試合後のインタビューで「小川瑛次郎選手はハピネッツを見て育っています。非常に楽しみな選手だと思っています。ただ1つお願いしたいのは、彼はスーパースターではありません、まだ。本当に秋田で、ここで育って大活躍するには、皆さんが甘やかさないでください。厳しい目で見ながら。まだ18歳です」。今後への大きな期待を込め、厳しく言及した。小川は「てっきりインタビューで褒めてもらえるのかなと思った(笑い)」と振り返ったが、今思えば、「契約発表の時やシュートを入れたその日の夜は、SNSを通してすごい反響があって、うれしいっていう心が前面に出て、周りが見えてなかったのもあった。(あの言葉は)『まだ高校生だっていうのを忘れるな』という意味なのかなと捉えています」。前田HCの親心、愛ある言葉だったと受け止めている。

その試合以降はゲームコートには立てなかった。「自分はこの中で1番下手」と現実を受け止めながら、小中高と試合に出続けていただけに、「自分も、ハピネッツ代表の12人になりたいんですけど、なかなかうまくいかない時がすごくあって」と今までとは違う境遇に戸惑った。だが、その経験も学びに変えた。「どういうところで勝負していくか、試合に出るためには何が必要なのか。そういう競争というのがすごい大事だなと感じています」。出場できなければ「チームが勝つために、出ない人は何をすることが必要なのか」と考えて過ごした。1日1日が勉強だった。

小川の特別指定選手の契約は2月29日で終了した。今後は白鴎大に進学。小川は「(皆さんの)良いところをしっかり吸収して、大学のチームメートにも共有したい」と意気込んだ。そして、応援してくれたブースターには「大学に行ったらハピネッツのいちブースターとしてバスケットライブなどで見ていくので、しっかりハピネッツを応援してほしいです」と共闘を呼びかけた。

茨城戦後、「甘やかさないで」とブースターに呼びかけた前田HCはこう続けた。「(彼は)まだまだ先が長いです。秋田で活躍してもらわないといけないと思っています。みんなで育てられれば素晴らしい選手になると思うので、これから大きく育ってくれると思うので、温かい声援をよろしくお願いします」。小川は「(4年後)戻ってきたい」。いつか秋田を代表する素晴らしい選手に-。彼が再び、クレイジーピンクを背負って戦う日はそう遠くない。

 

◆小川瑛次郎(おがわ・えいじろう)2005年(平17)10月1日生まれ。秋田県秋田市出身。城南中-羽黒。秋田ノーザンハピネッツU15に所属。3人制、5人制問わず世代別代表にも選ばれ、昨夏はU19日本代表として史上初のベスト8入りに貢献した。187センチ、80キロ。

 

◆特別指定選手 現役の高校生や大学生を対象に、16歳以上22歳以下の選手がBリーグに出場できる制度。個人の能力に応じた環境を提供することを目的としており、各クラブは通常の選手登録枠とは別に2人までを登録することが可能となる。