2016年夏季五輪招致を陣頭指揮してきた1人の東京都の谷川健次副知事が、開催都市を決める10月の国際オリンピック委員会総会を前に石原慎太郎知事の人事で突然、退任することが決まり、都庁内や日本オリンピック委員会(JOC)に波紋が広がっている。

 知事は4日、新銀行東京を所管する佐藤広産業労働局長を副知事に選任する人事案を議会運営委員会理事会に提出。5日の本会議で同意される。

 五輪招致担当の谷川氏と同時に、総務局などを所管する山口一久副知事も辞表を提出し、4人の副知事のうち、いずれも都生え抜きの2人が任期満了まで約2年を残して5日付で退任。佐藤氏の昇格に伴い、副知事は民間出身の猪瀬直樹氏を含め3人体制になる。

 知事は理事会後に「(退任は)都政の運営を考えた結果。五輪は1つのめどがついた」と述べ、今後は都の幹部職員よりも、専門性の高いJOCや外務省の出番が増えるとの見方を示した。

 しかし、JOCの福田富昭副会長は「何もこの時期に替えなくてもいいのでは」と驚いた様子。「谷川氏はスポーツへの理解もあり、招致が終わるまでやっていただきたかった」と残念がる。

 都の局長は「谷川氏はやる気満々だった。青天のへきれきだったはず」と心情を思いやる。

 自民都議は「知事の感性の問題。理由は分からない」と話している。(共同)