<体操:全日本学生選手権>◇2日◇埼玉県熊谷市

 男子個人総合で仙台大の植松鉱治(4年=大阪・清風高)が、北京五輪個人総合銀メダリストの内村航平(日体大2年)を抑え、初優勝した。仙台で五輪メダリストに-という夢を抱き、大阪から移り住んで4年目。昨年の北京五輪代表選考過程中の負傷から復活した植松が、4年後のロンドン五輪に向け好スタートを切った。

 最終種目の鉄棒の着地を決めた瞬間、植松は「いける!」と確信した。それまで内村とは0・55点のビハインドがあったが、手応えはあった。注目の最終演技の得点。種目別1位となる植松の15・900に対し内村は15・100。土壇場での大逆転だ。五輪メダリストを従えた歓喜の表彰台。植松は、スタンドの部員に向けて優勝カップを突き上げ、喜びをかみしめた。

 あの「悪夢」を忘れはしなかった。北京五輪代表選考を兼ねた昨年の全日本選手権。最終種目のゆかで回転しきれず、頭から落下した。脳振とうを起こして病院に担ぎ込まれ、代表選考から脱落した。同じ大学生の内村、坂本が北京で活躍する姿をテレビで見て、歯がゆかった。だから五輪銀メダリストに勝ったことが「本当にうれしかった」。

 高3の時、選抜大会個人総合を制し、複数の強豪校から声がかかった。その中から仙台大に進学した理由は「(仙台大で)五輪に出場した人がいないから。そしてメダルを取りたい」。自分を磨くため、歴史に名を刻むため、関西弁の青年は杜(もり)の都での生活を決め、4年目で栄冠をつかんだ。だが、満足はしない。10月には、苦汁をなめた全日本選手権が控える。4年後に向け、まずは第一関門突破を目指す。