<体操:全日本選手権>◇11日◇東京・代々木第1体育館◇女子個人総合決勝

 今春から日体大に進学し、女子大生になった笹田夏実(18)が全日本2連覇を達成した。床運動で出場24人中トップの13・900点をマークするなど、大きなミスなく4種目をこなし、合計55・950点で2位のロンドン五輪代表の寺本明日香(18)に、わずか0・500点差の勝利だった。

 女子大生はよく笑う。ミスでも成功でも泣いていた笹田が、満面の笑みを絶やさず、爽やかに2連覇を達成。「昨年はびっくりの優勝。今年は狙いに行っての優勝。有言実行できて、倍、うれしい」。昨年より、ひと回り成長した姿を見せた。

 3種目を終わって、1位笹田と2位寺本は0・100点の僅差。最終種目の床運動で、1つミスするだけで逆転される点差だ。しかし、笹田自身は「リードしているのも知らなかった」。集中し、苦手の着地を止めることだけを考えた。そして笑顔で逃げ切った。

 母は全日本3度の優勝で幻のモスクワ五輪代表だった弥生さん(51=旧姓加納)。昨季までは二人三脚で歩んできた。しかし「わたしが教えられることは終わった」(弥生さん)と、笹田は母の手を離れ日体大に進学。初めて部活動を経験している。

 1室4人部屋の寮生活。「1年生は必勝雑巾を縫うんです」と、経験の少ない裁縫や料理も下級生の役目だ。年上でも「ちゃん」づけしていた呼び方も、今は上下関係で「さん」づけ。「大変だけど、目新しくて本当に楽しい」。女子大生と2連覇で、名実ともに日本女子のエースになった笹田が、新たな体操人生をスタートさせた。【吉松忠弘】