世界の司令塔がトップリーグ(TL)デビューを果たした。今季神戸製鋼に加入した元ニュージーランド代表SOダン・カーター(36=ニュージーランド)がサントリー戦に先発し、フル出場。自らトライを奪うなど、ワールドラグビー(旧IRB)の年間最優秀選手に3度選ばれた実力を披露し、36-20の勝利に貢献した。前節が北海道の地震の影響で延期となった神戸製鋼は開幕2連勝、サントリーは2勝1敗となった。

ぎっちり埋まったスタンドの視線が、赤いジャージーの背番号10、カーターに注がれた。2連覇中の王者サントリーを相手に、数々の伝説を作ってきた左足で攻撃を演出。前半7分に右中間からの25メートルのPGで初得点を挙げると、22分には右サイドを抜け出したWTB山下楽が内側へ戻したパスを受け、自ら25メートルを走りインゴールに飛び込んだ。

1トライ2G4PGの活躍で、マン・オブ・ザ・マッチに選出。チームをサントリー戦4季ぶりの勝利に導くと「新たなチームに入れば新たにチームからのリスペクトを得なければならない。この一戦はスペシャルなものになった」と満足そうに振り返った。

ニュージーランド代表「オールブラックス」112キャップを誇り、精度の高いキックとリーダーシップを兼ね備える司令塔として、11、15年のワールドカップ(W杯)で優勝。世界の年間MVPにも最多3度輝き、テストマッチの最多得点記録も保持するなど、スター選手として輝かしい実績を残してきた。

15年W杯で代表を引退し、フランスのラシン92で3季プレー。7月に神戸製鋼と2シーズンの契約を結び「自分のキャリアを神戸で終わらそうと思っている」とチームに合流した。開幕戦はふくらはぎの張りで出場を避けたが、大阪城を訪れたり、すしや神戸牛を楽しむなど、チームになじむ努力も惜しまず、この日のデビューにつなげた。

神戸製鋼は、ビッグネームに引っ張られるように、新加入のSH日和佐、WTB児玉らが活躍し、開幕2連勝。カーターは「プレーオフ、優勝のために、さらなるハードワークが必要」と力を込めた。03年以来の優勝を目指す名門に、刺激的な大物が加わった。【奥山将志】