大相撲の野球賭博事件で警視庁組織犯罪対策3課は26日、胴元役の元力士ら4人を逮捕した。いずれも阿武松部屋の元十両「古市」の古市貞秀容疑者(34)と母米子容疑者(63)、元幕下「松緑」の藪下哲也容疑者(29)は力士らから賭け金を集めたとして、賭博開帳図利の疑いで、元幕下「梓弓」の山本俊作容疑者(35)は同ほう助の疑い。賭博行為そのものの立件は初めて。警視庁は、4人を通じて野球賭博をした現役力士らを近く賭博容疑で書類送検する。日本相撲協会の調査に対しては元琴光喜関ら33人が野球賭博をしたと認めており、立件の可否を検討する。

 野球賭博事件で角界が揺れた昨年7月の名古屋場所で、当時現役だった力士の中から、ついに逮捕者が出た。同場所はNHKが史上初めて中継を中止し、場所の開催まで危ぶまれた。組対3課は、4人が角界にまん延していた野球賭博の事実上の胴元を務めていたと判断。千葉市花見川区の古市貞秀容疑者宅、大阪府交野市の古市米子容疑者宅、石川県の藪下容疑者宅がこの日、家宅捜索された。

 一連の事件では、賭博の客だったとされる元大関琴光喜関(34)に口止め料を要求したなどとして、この日逮捕された古市貞秀容疑者の兄で、元力士の古市満朝被告(38)や指定暴力団山口組系組幹部らが恐喝容疑で逮捕、起訴された。山本容疑者は公判で元琴光喜関らに賭博をさせたことを認め、恐喝事件の被害者とされる。任意の事情聴取に「名古屋市で知り合った山口組弘道会系組長が胴元で、自分は賭博の仲介役だった」と供述。組長が死亡した09年夏以降は自ら賭博を仕切っていた疑いがある。

 昨年名古屋場所当時、古市貞秀容疑者と藪下容疑者は現役で、山本容疑者はすでに引退していた。古市容疑者は日本相撲協会から解雇され、藪下容疑者は同場所を謹慎、9月の秋場所を全休後に引退した。

 藪下容疑者と山本容疑者の逮捕容疑は09年4~5月、力士ら6人にプロ野球の試合結果を予想させ、賭け金計約100万円を集めるなどした疑い。古市容疑者と米子容疑者の逮捕容疑は、昨年5月の試合で3人に20万円を賭けさせた疑い。

 日本相撲協会の調査で、これまで33人が野球賭博をしたと認めている。警視庁は、現役力士らを含めて近く賭博容疑で書類送検の方針。元琴光喜関らについても立件の可否を検討する。一方で相撲協会の放駒理事長(元大関魁傑)は「協会としては決着のついている話」と、賭博を認めた33人に新たな処分は科さず、27日の理事会でも議題に上げない方針だという。