鳴尾浜球場-。12日に行われた阪神-オリックス戦のこと。前日には全く姿さえ見せていなかった選手が、オリックスのスタメンに名を連ねた。「1番・ショート大城」だ。それも、そのはず。よく調べてみると前夜、東京ドームでの1軍の日本ハム戦に出場しているではないか。今季入団したばかりの若い選手とはいえ、東京でのナイター後、翌日午後零時半から関西に移動しての試合に先発するのは、体力的に厳しい。半面、それでも実戦経験を積ませる起用は期待のあらわれだ。

 本人のやる気。首脳陣の期待度。双方の思惑が一致した方針であるのはよくわかる。大城滉二内野手(22)右投げ、右打ち。立大から今季ドラフト3位で入団した新人である。

 打席に立てば、いきなりセンター前へはじき返す会心の一打。次の打席では左へ二塁打を放つ。バットは上から出ている。振りはシャープで、ヘッドスピードもかなりのもの。相手投手は、つい最近プロ入り初勝利を挙げたばかりの横山だ。調子に乗っているピッチャーからのヒットは自信になる。

 私が大城に興味を持ったのは、このヒットではなく次の打席だった。ピッチャーは高校出の新人で将来が嘱望されている望月に代わっていたが、2球で簡単にノーボール、2ストライクと追い込まれた。5回、この回の先頭バッターだ。大城に与えられている役目は出塁することだ。追い込まれると、ついボール球に手を出しがちになる。苦しい状況になったが逆にこういうケース、選手の資質を問われる厳しい場面でもある。要するに、ここで簡単に打ち取られてしまうものなら、首脳陣からは厳しい採点がくだされる。さあ、どうする。

 「あのケースでは、追い込まれてからは1球1球真剣に見極めました。何とか四球を選ぶことができましたので、ホッとしました」は大城である。大砲ではない。野球を大いに勉強して、野球をよりよく知っておかないことには、この世界で生きていけないタイプだ。本人の談話は己をよく知ったうえでの発言。下山バッティングコーチは「素晴らしいセンスの持ち主ですね。楽しみな選手ですよ。とにかく、何事においても対応できる能力を持っていますから」。やはり期待度は高い。

 期待度の高いのは高校、大学というアマチュア時代の実績にもあらわれている。沖縄は興南時代、同校が甲子園球場で春、夏の連続優勝をしたときの選手で連覇に貢献している。その後、東京6大学は立大に進学。そこでも大変な記録を更新した。4年間で放ったヒットは112本。同大学の通算安打記録を塗り替えた。たいしたものだ。野球センスのない選手がこれだけの実績を残すことは絶対にありえない。が、今年からもうプロの一員だ。過去を振り返っている場合ではない。「やっぱりプロのレベルは高いですね。バッティングや守備も含めて、すべての技術のレベルを上げていかないことにはついていけません。テーマですか…。やはりすべてですね。今日は、東京を朝9時台の新幹線に乗ってきました」。鳴尾浜へ直行。若いからこそできる強行軍だが、プロのレベルの高さ、大城の場合、ハイレベルな力を持ち備えているからわかるのだろう。

 この試合、前夜まで東京で一緒に戦っていた、風岡内野守備走塁コーチも帰阪し、大城のプレーをチェックしていたことで期待度の高さもわかる。「大城はすべてに高い能力を持った選手ですので、少しでも多くの実戦経験をさせたい。やっぱりいろいろ覚えていくのは、実戦から得るものが多いし、できればこれからもチャンスがあれば昼夜兼行で鍛えていきたい」。確かに同コーチのいうように練習より実戦だ。普通、東京-大阪間でのこういうケースは2軍落ちした選手ならありがちだが、ゲームのない日とはいえ1軍に登録されたままの場合は珍しい。

 頑張り屋だね。本人は「まだ勉強することはいっぱいあります。そういう意味で実戦の場合はいろんなケースが発生しますし、状況判断など、どん欲に吸収できますのでありがたいです」と前向きだ。ちなみに、ウエスタン・リーグの成績は、81打数、24安打、打率.296。ルーキーとしては申し分ない。やる気十分、努力は報われるはずだ。その条件は野球を好きであり続けることである。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)