八戸工大一の古屋敷匠真投手(3年)がドラフト候補の片りんを見せた。八戸学院光星を相手に3点リードの9回に登板。無死満塁のピンチを招き1点こそ失ったが、この日最速147キロの直球を武器に2個の三振を奪った。県大会につながる八戸地区予選(5月6日開幕)のシードを決める同大会で宿敵光星を撃破。夏の甲子園に出場した10年以来、7年ぶりに優勝した。

 自慢の直球がうなりをあげた。四球と2本の安打で招いた9回無死満塁のピンチ。古屋敷は、ちぎれんばかりに右腕を振って一気にギアを上げた。「自分なりに冬場は追い込んでやってきた。絶対抑えられると思った」。相手9番を犠飛に抑え、続く1番の3球目にこの日最速147キロを計測。最後は146キロ直球で2者連続の空振り三振で締めると、ホームに駆け寄り工藤晴貴捕手(3年)と歓喜のグラブタッチを行った。

 剛腕の歴史がある。長谷川菊雄監督(40)は2学年上の195センチ右腕・内沢航大(現法大)や昨年のエース種市篤暉(現ロッテ)を育ててきた。「投手は球速だと思っています。見てても球が速い方が面白い。制球重視とは言ったことがないですね」。ひたすら球速を追求するのが剛腕育成のコツで、特に冬場の練習に秘密が隠されていた。「器具を使った筋力トレーニングはあまりやらせません。自然な筋肉をつけてほしいので」と意図を説明する。

 充実の冬を過ごした。古屋敷は長谷川監督の指示に従い、ひたすら走り込みや神社の階段ダッシュ、懸垂などで自分を追い込んだ。昨秋から6キロ増の80キロまで増量して臨んだ3月の関西遠征では、3キロ増の最速149キロまで到達。「球の質が秋とは全然違う。直球でファウルや空振りがとれるようになった」と成長を実感し、春を迎えていた。

 7年ぶりの夏の甲子園出場をステップに、プロ入りを目指す。「地元勢だけでも甲子園で勝てるのを見せたい」と胸を張り、「種市さんが刺激になった。プロ野球選手になりたい」と目を輝かせた。【高橋洋平】

 ◆古屋敷匠真(ふるやしき・たくま)2000年(平12)1月1日、青森・東北町生まれ。蛯沢小3年から野球を始め、東北中では軟式野球部に所属。中3で上北選抜に選ばれ県大会で優勝し、全国大会3位。八戸工大一では1年春からベンチ入り。178センチ、80キロ。右投げ左打ち。