<日本シリーズ:巨人1-2西武>◇第1戦◇1日◇東京ドーム

 巨人、西武の日本シリーズが東京ドームで開幕。西武涌井秀章投手(22)が巨人上原浩治投手(33)とのエース対決に投げ勝って2-1で先勝した。涌井は4回に先制点を許したが、テンポよく8回を1安打1失点8奪三振と好投し、日本シリーズ初登板で初勝利を挙げた。02年以来10度目のGL決戦で渡辺西武が好発進した。

 頼もしすぎる22歳若きエースの快投だった。注目の第1戦。しかも巨人本拠地東京ドーム。涌井は重圧を力に変えた。「今日は全国放送だったんで、頑張っちゃいました」。8回まで1安打8三振。涼しい顔で大胆に攻め、巨人強力打線を力で黙らせた。

 4回、ラミレスに許した唯一の安打は、右前に落ちる適時打。1点リードの6回、1死一、二塁のピンチでは、投ゴロ併殺に仕留めてリベンジ。高速スライダーでバットをへし折り「腕を振ることだけを考えた。ボール球を打ってくれてラッキーだった」とガッツポーズをつくった。

 1点を争う投手戦で上原に投げ勝った。ともに戦った北京五輪で登板しない時は、球数チェックやチャート表をつけた。普段はスコアラーが行うデータ収集作業を若手の涌井は率先して行ったが、「ベテランの方も一緒になってやってくれたんですよ」。投手陣リーダーの上原を中心に、投手陣で協力した思い出が胸に残っている。この日は安打性の当たりを打たれ「走ったから疲れたんじゃないですか」。大舞台に強い上原にポストシーズン初黒星をつけた。

 打者をにらむ視線の先にライバルがいた。テレビのゲスト解説で球場に来た日本ハム・ダルビッシュを強烈に意識した。「クライマックスシリーズでダルに内角を攻められた打線が、次のゲームで打撃を崩された。それをやりたいと思っていた」。強気に懐をえぐり、勝負どころでフォークを落とした。この試合だけでなく、シリーズを見越した厳しい攻めで巨人に嫌な印象を植えつけた。

 エースにふさわしい仕事には、渡辺監督の執念も乗り移った。現役時代、日本シリーズ第1戦には4度先発し3勝0敗。チームに勢いを呼び込んだが、当時の森祇晶監督は2戦目重視の戦略だった。「2戦目は工藤さんがよく投げて『2戦目が大事』って言われるたびに悔しくて死に物狂いで投げた」。自らが監督となって「1戦目重視」を掲げた。CS初戦も任せた涌井が好投し、ポストシーズン3連勝。若きエースが、思いをしっかりと受け継いでくれた。

 8回の降板も納得だった。涌井は「9回は上位からだったし、あそこが精いっぱいでした」と悔いを残さなかった。昨年はかわす投球を覚え17勝で最多勝を獲得。今年は力で押すスタイルを追い求め壁にぶつかった。「とにかく腕を思いきり振れば、打者も振ってくれる。ダルや岩隈(楽天)さんがそうですから」。なりふり構わず腕を振って変化球の精度が増し、ここ一番は力で押せた。追い求めた最高の投球を大舞台の日本シリーズでやってのけた。【柴田猛夫】