非情のエース育成プランだ!

 2年目の飛躍が期待される阪神秋山拓巳投手(19)が2軍キャンプスタートとなった。兵庫県西宮市の虎風荘で22日にコーチ会議が行われ、1、2軍のキャンプメンバーが発表された。高卒ルーキーながら4連勝を飾った秋山は体作りを重視。高知・安芸から開幕ローテーションを目指すことになった。

 キャンプイン直前のサプライズだった。1軍のキャンプメンバーが発表されたが、その中にプロ2年目の有望右腕の名前がなかった。秋山は2軍が鍛錬を積む高知・安芸で2月1日を迎えることになった。

 「紅白戦で、いいアピールができるように、がんばります」。話好きの19歳はこの言葉だけ残し、練習に戻った。表情には落胆の色がにじんでみえた。

 昨年のシーズン途中に1軍に昇格し、高卒ルーキーながら4連勝を飾った。将来のスター候補として、2年目は沖縄の1軍キャンプ入りが当然視されていた。本人も宜野座に先乗りするスケジュールを組んでいたが、まさかの安芸スタート。コーチ会議を終えた真弓監督は理由を説明した。

 「どちらに行ったほうがいいかを考えた。去年のようにじっくりと調整してもらったほうがいい。体調が悪いわけじゃない」。

 キャンプの振り分けが開幕に直結するわけではない-というのが指揮官の考え。それでも沖縄には1軍首脳がそろい、絶好のアピールの場になる。若手にとっては、沖縄行きはひとつの目標でもある。秋山の落胆にも、それが表れている。

 久保投手コーチは「まだ芯からできた体じゃない。もう少しじっくり(去年と)同じように、という意図。しっかりしたプログラムを組んできた選手だから」と補足。将来のエース候補だから、慎重に育成することを強調した。その言葉の裏には、まだまだ1軍扱いしないという意味も隠されている。大物右腕に育てるための非情なプログラムと言っていい。

 秋山は「悔し涙」とともに成長してきた。09年のドラフト会議では上位指名を期待したが、4位という順位に涙をこぼした。昨年8月のプロ初登板・初先発は敵地の巨人戦という厳しい環境。好投むなしく敗れ、ベンチで泣いた。そんな反骨心が再び試されることになった。

 この日は鳴尾浜球場で、ブルペンで投球練習を行った。プロ2年目のキャンプの青写真はある。

 「自分のペースで、打者に対して投げられるところに持っていきたい。2年目は自分の考えも入れながらやりたい」。

 1軍メンバーに入っても決して楽ではない戦いが待っていた。久保、能見、スタンリッジ、岩田、下柳ら先発ローテーションは激戦だ。そこに割って入れるのか。秋山よ、安芸から、はい上がれ!

 [2011年1月23日11時16分

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