<慈善試合:日本ハム4-1楽天>◇2日◇札幌ドーム

 被災した人々を思う真心あふれるスピーチだった。東日本大震災からの復興支援のため、プロ野球の慈善試合6試合が2日、全国各地で開催された。被災地仙台を本拠地とする楽天は、札幌ドームで日本ハムと対戦。試合前、選手会長の嶋基宏捕手(26)がグラウンドであいさつに立ち、日本中が団結しての支援を呼び掛けた。

 日本ハム田中に続き嶋が口を開くと、場内はシンと静まった。「あの大災害、本当にあった事なのか今でも信じられません」。真っすぐホームの方を見詰め、言葉をかみしめるように続けた。「地震が起きた時、僕らは兵庫県で試合をしていました。家がある仙台にはもう1カ月も帰れず、横浜、名古屋、神戸、博多、そしてこの札幌など全国各地を転々としています」。心に残る出来事があった。

 神戸で募金を呼び掛けたとき。「前は私たちが助けられたから、今度は私たちが助ける」と声をかけてくれた人がいた。「今、日本中が震災に遭われた方を応援し、みんなで支え合おうとしています」。広がる支援の輪。選手全員、同じ気持ちだ。「地震が起きてから眠れない夜を過ごしましたが、選手みんなで『自分たちに何ができるか?』『自分たちは何をすべきか?』を議論し、考え抜きました」。話し合いが夜中12時を超えることも珍しくなかった。動揺を乗り越え答えを導き、物資を送った。募金活動も始めた。「今、スポーツの域を超えた『野球の真価』が問われています」と前置きし、一段声を強め純な呼び掛けで締めた。

 嶋

 見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を。共に頑張ろう東北!

 支え合おうニッポン!

 僕たちも野球の底力を信じて、精いっぱいプレーします。被災地のために、ご協力をお願い致します。

 心からの訴えは3分を超えた。実は、日本野球機構(NPB)から各球団にスピーチ案が送られていた。だが、自分の言葉で伝えようと前夜、練習を繰り返した。ベンチに戻った嶋を「ナイスプレー!」とたたえた星野監督は「涙が出てきた。本当に…込み上げてきた」と深くうなずいた。

 誰もが特別な思いを抱く開幕まで10日。嶋は「たくさんの人が亡くなり、人の気持ちが簡単に元気になることはない。チームとして長い期間、応援したい」と誓った。野球選手の本分も忘れない。「ユニホームを着たら勝負にこだわる」。3回の第1打席、日本ハムファンからも拍手を受けたのは気持ちが伝わったから。全身全霊をかけ、シーズンを戦う。【古川真弥】