<パCSファイナルステージ:日本ハム4-2ソフトバンク>◇第3戦◇19日◇札幌ドーム

 日本ハムが“ストレート勝ち”で、3年ぶり6度目の日本シリーズ進出を決めた。4番中田翔内野手(23)が、初回にポストシーズン初打点となる左翼フェンス直撃の先制適時二塁打。6回には中前打で出塁して追加点の口火を切った。混戦のパ・リーグを制した勢いを持続し、レギュラーシーズンで負け越したソフトバンクに3連勝。就任1年目の栗山英樹監督(51)のもとで不動の4番に成長した主砲は、27日開幕の日本シリーズで6年ぶりの日本一へ挑む。

 お立ち台からの景色は最高の眺めだった。これが、目指してきた4番の仕事だ。中田のバットが、チームを日本シリーズへと導いた。「3連勝なんて最高の結果だけど、ファイターズらしい野球をやれば、負けるはずがないと思っていた。チームがひとつになった。自分自身もしっかりバットが振れているし、ボールが見えている。いい感じだったと思います」。心地よい充実感に、表情は緩んだ。

 崖っぷちのソフトバンクには、強烈すぎる先制パンチだった。1回2死一塁。エース摂津の127キロスライダーを「先っぽだった」と言いながら、左翼フェンスにノーバウンドでぶつけた。二塁ベース上では、ベンチを指さしてガッツポーズ。稲葉、小谷野、ホフパワーの連打へとつながる、口火の一撃。ヒーローインタビューでは「バットの先?」と聞かれ「いやぁ、力があるんでね」と、リップサービスで笑いを誘った。

 今季就任した栗山監督からは「チームを優勝させる4番になってほしい」と、すべての試合で打線の真ん中を託された。「今年は今まで経験したことないことばかり経験できています」。やりがいも、重圧も感じたが、全うしたことで自信も得た。09年は2打数2三振に終わった日本シリーズ。「あのときは何となく打席に立ってた。今回はどういう緊張感が味わえるのか、楽しみ」。主力として迎える大舞台に武者震いした。

 その4番の大先輩でもある小久保の胴上げに、感慨深い思いで参加した。球宴に初出場した昨年、小久保の元を訪れて打撃理論を聞いた。それは、恵まれた体格と野球センス、そして本能で野球を続けてきた中田にとっては、衝撃的なものだった。対戦する投手によって「打撃フォームを少し変えたり、バットの種類を使い分けている」という大ベテランの細やかな打撃感覚に触れた。「自分にはそこまでできない」。一流打者としての妥協のない探求心に度肝を抜かれた。

 以来、野球に対する思考に変化が見えた。状況判断や、配球の読み。ベンチで味方の攻撃を見ているときにも「この投手の今日の調子だったら、このカウントはスライダーかなとか、予想する」ようになった。チームメートの稲葉同様、小久保から受けた影響は大きかった。

 4番として残された仕事はあと1つ。日本の頂点に立つことだ。「ここまで来て日本一にならないと、みんなで頑張ってきた意味がない」。最後で最大の大仕事。その先に、最高の瞬間が待っている。【本間翼】

 ▼中田が初回に先制の二塁打を放った。これまでポストシーズンの中田は2安打しているが、ともに走者がいない場面。走者を置いた打席は、三振、投併、四球、捕ゴ、中飛、左失、四球と、前日まで7打席ノーヒットだった。ポストシーズンでは通算8試合目で、初めて走者を置いた場面で安打を放ち、打点も初めて記録した。