「AKBノック」で実りの秋を目指す。楽天の秋季キャンプが2日、岡山・倉敷のマスカットスタジアムで始まった。若手中心に30人が参加。初日から星野仙一監督(65)は動いた。自らバットを握り、期待の投手5人に1時間ほど、就任後は最多となる合計600スイングのノックを浴びせた。最終日の19日まで、みっちり鍛える。

 サブグラウンドに現れた星野監督は、やおら準備運動を始めた。革手袋をはめ屈伸する。「痛いんや」と言っていた腰も、お構いなしに、ぐるぐる回した。「1人、5本ずつや」。ニヤリと笑い声をかけたのは塩見、戸村、菊池、辛島、釜田の若手投手5人。二、三塁間に並ばせた。

 まずは三塁方向へ1発。塩見がギリギリで捕ったが、間髪入れず次は二塁付近へ。右に、左に走らせた。「エラーの分、センターへ走れ!」。無慈悲な声は続く。「捕れ、アホ(A)!」。「走らんか、この野郎(K)!!」。「だから2アウトから打たれるんだ。バカ野郎(B)!!」の“AKB”を浴びせた。日ごろ「関西のAKBはアホ、カス、ボケや」と話すとおり、厳しいムチは続いた。

 2度の小休止を挟み、実に1時間で600スイング。「慣れるといけない」と、あえて整備しないデコボコの土でやらせた。ようやく終わると、全員がへたり込んだ。監督は「俺の腰の方が先にやられるかもな。フフ」と、うれしそう。ただのかわいがりではなかった。いずれも先発ローテに期待する5人。「こいつらがしっかりせんと、これからのイーグルスはないよ」と意図を明かした。

 就任から2年連続Bクラス。練習開始前に言った。「うちに足りないものは何か?

 球際、土俵際。“際(ぎわ)”に弱い。心身、追い込んでないからだ」。だから早速、追い込んだ。全員を集めた円陣では「この秋に、やらないと成長しない。実りの秋にしよう!」と訓示。「来季は、てっぺんを目指す。倉敷でスタートだ」と宣言もした。その初日。自ら先頭に立った。【古川真弥】<星野監督のノック>

 ◆中日時代

 40代から50代前半、自らノックをすることは珍しくなかった。「今中、(川上)憲伸、(山本)昌。ようやった。昌は体が強かったな。ばてた演技もしとったけど」と振り返る。

 ◆阪神時代

 要所で行った。1年目の02年6月、首位陥落直後に甲子園で初めて実施。井川、安藤、吉野、福原に約20分で100球を打ち、活を入れた。

 ◆楽天時代

 昨秋の倉敷キャンプで就任後初めて実施。午前中は嶋ら捕手陣に、午後は投手陣に行った。